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第79話
…
い、勢いで部屋に入ってしまった!
どどどうしよう!!
「突っ立ってないで適当に座って」
「は、はい…」
成谷先輩はネクタイを緩めながら着替える為か奥の部屋に消えていく。
…
緊張しながら白いソファーに腰かけ部屋を見渡した。
以前も思ったけど掃除が行き届いていて綺麗な部屋だ。自分の足下を見ても塵ひとつない。
掃除頼んでるのかな?
「あー!マジ腹減ったな」
ビク!
着替えて来た成谷先輩は至って普通のカットソーにジーンズ姿だ。
なのに普通に…カッコいい!
「三階、昨日はちゃんと飯食ったか?」
「え、はい。食べました。あ、あの…うどんって…」
「うどんってうどんだよ。麺は冷凍のだけど、ちょっと待ってろ」
キッチンへ向かう成谷先輩は鍋を出して冷蔵庫を開けて何かを出している。
?
え、もしかして…
「え、あの…もしかして…成谷先輩が作るんですか?」
「?…当たり前じゃん」
「…当たり前ですか?」
「…三階が泊まった時の朝飯は俺が作ったけど…気がついてなかった?」
「」
「気づいてないのか」
「先輩…料理できるんですか!」
「まぁ、するよ」
「ってあの時の朝ご飯先輩作ったんですか!!」
「…」
細田事件があった日は、不覚にも気絶してしまい成谷先輩の部屋に泊めてもらったんだ。
次の日に出てきた朝食はパンとスクランブルエッグやサラダだった。
てっきりオーダーした朝食だと思っていたのでとても衝撃的だ!
「す、すごい!もしかして自炊してるんですか?」
「…寮にいるときはね。作った方が安心だし美味いし」
そう言いながらも先輩は動きながら何かをしている。
料理はしたことがないので作業内容はさっぱりわからない。
そしてこの位置からは見えないかった。
…
ソワソワ
…
「あ、あの…」
「こっち来て作ってるの見る?」
「!いいの?」
「大した事してないけど、どうぞ」
やった!
カウンターキッチンになっているのでリビング側から成谷先輩が料理している姿をそっと眺めた。
ほとんどキッチンには無縁なので、とてもとても興味があった。
おおおお……!!
「その四角い白い塊が麺ですか!?」
「そう…凍ってるからカチカチだけどね…」
「おおお」
「…そんなに驚くか?」
「初めて見ました」
「マジか」
「マジです」
「はは…三階お前怒ってるんじゃなかったのか?」
「怒ってますよ勿論…だから挨拶もどうしようか今部屋の前で迷ってたんです」
「…そうか…悪かったな。どうしたら許してくれるかな?」
「…」
「毎回口尖らせ怒ってる三階を見るより、笑ってる三階が見たいんだけど」
「…」
「ずっと避けられるのもショックだったしな」
「え」
「はい、できた」
「え!?もう?」
見たことないけど、とても良い香りのするうどんが二つ用意されていた。
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