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第80話

「かきたまうどんって初めてです」 「そっか」 とろみのあるスープにとき卵が混ざっていて何とも不思議な感じだ。 ネギとかまぼこが入ってなかったらもっといいんだけどなぁ…って思ってたら、 「あさつきもかまぼこもちゃんと食えよ」 「…」 …先に言われてしまった。…このネギ…あさつきって言うのか… 「いただきます」 「どうぞ」 何故か成谷先輩と一緒に夕飯となってしまったけどこうなったら仕方がない。 緊張して味わからないかも… フーフー … 「…あ、美味しい…」 お出汁がいい味だしそれにとろみがついていて麺に良く絡む。 優しい味だった。うん、あさつきとかまぼこ意外は全然食べれる! 「それはよかった」 「…」 …あわわ… な、なんかとってもいい笑顔するんだな先輩は…普段の笑顔とちょっと違う感じがする…そんな優しい笑顔をされると困ってしまう。 ドキドキしてきてしまうから。 「三階ほら、あさつき残ってる。…かまぼこも食えって」 「…、ネ、ネギ無理です…か、かまぼこ…」 「ったく…本当好き嫌い多すぎだろ。食べ物を粗末にするんじゃねぇ」 「だって…食べたら吐くっ!」 「お前なぁ…」 「ネギは先輩にあげます!かまぼこ…は…あ、うう…何とか頑張ります。…あのっ!先輩のこともう怒ってないんで!本当…本当…ごめんなさい…」 「…はぁ?ネギでチャラにしようとしてるのかよ!そんなにこれイヤなのか…」 「……」 「はぁ……ったく…ほら…かせよ特別だぞ。食ってやるから」 「すみませんすみません」 そうお詫びをしながら残したネギを先輩に食べてもらった。 ネギは苦手だ… かまぼこは何とか頑張って胃に流し込む。 「はい、じゃぁこれで俺へのお怒りもチャラってことだな」 「…うう…チャラです…あ、でもうどん本当美味しかったです!ご馳走さまでした!」 「お粗末様でした」 食器をてきぱきと片付ける先輩の動きは無駄がない。 …ちゃんと毎日やってる証拠だな。 凄い… 何をやっても絵になるその姿をぼーっとお茶を頂きながら見とれていた。 は、いけない! っていうかもういい加減帰らないと… 「あの、先輩…僕もうおいとましますね」 「ん、そう?」 「はい、夕飯ご馳走様でした」 「いいえ、じゃぁ、三階ほら」 「?」 「こっちおいで?」 「え」 何か成谷先輩が両手を広げてるんだけど… 「ちゃんと仲直りしよう?おいで…」 「は!?」 「怒ってないんだったら別にいいだろ?ほらほら」 ええええ!!そんな!そんなこと! 「あの!そんな夕飯ご馳走になっただけでも贅沢なのに!それにそんな!先輩の恋人たちにあのっ申し訳ないからそんなの無理ですってっ!!」 「…はぁ?お前何言ってんだ?いいからとりあえず来いって、先輩命令!」 「……」 そんなふうに言われたら断れない… 吸い寄せられるように先輩の前に足が向く。 う、うわあぁぁぁ… せ、先輩に包まれてる… あったかくて背中に腕がまわって頭を先輩の手がポンポンしてて… し、幸せ過ぎるんじゃ… 先輩の顔が僕の肩に埋もれすりすりされる。 チュッと首筋にキスをされた。 「や、やめ…」 「…やめたくない…」 「だ、だだ駄目ですよ…」 「…どうして?」 … よしっ! ちゃんと言おう! 「先輩!後輩をそうやって揶揄わないでくれますか?こ、困るんでっ!成谷先輩には沢山綺麗な恋人がいるって聞いてます…!こんなことしてたら恋人たちが可哀想じゃないですか!というか「たち」じゃなくてっ!遊びなのかわからないけど、やっぱりあっちそっちと関係を持つのはいけないと思います!」

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