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第82話
…
…
「…す、すみませんでした」
ただ今…
ひたすら恐縮中…
「マジおどろいたよー!太我に用があって部屋の前まで来たら、中から叫び声が聞こえるんだもの」
「はい…」
「…俺も驚いた」
香乃先輩が腕を組みながらソファーに腰かけている。
どうやら僕はリアルで悲鳴を上げていたらしくすぐに扉がドンドン叩く音が響いた。
…だって、だって驚いたんだ…物凄く。
「でー何してたんだよ。言っとくけど幼馴染だからといっても許せることと許せないことあるからな!あいちゃんの部屋まで聞こえてなくてよかった!太我!三階に何したんだよ」
「キスした」
「……?それだけ?」
「口説いてた」
「おおおーーー!!!」
「それだけだよ」
「はぁ??それだけで三階があんなに叫ぶかよ!」
「本当にそれだけだよ。な?三階」
「はい…そう…です…」
「……なんであんなに叫んだの」
「だって!先輩が僕のこと口説くとかっ!あり得なくてビックリして…」
「目の前に好きな奴がいたら口説くだろう?な、一智」
「…まぁ…そうだけど…三階は太我のことどう思ってんのー?」
「え!」
「何お前が聞いてんだよ。三階…俺も聞きたい…一智が邪魔なら追い出すけど?」
「あのなぁ!!俺を邪魔もの扱いすんな!」
「あの…あの……」
「」
「」
駄目だ…言葉にできない!好きだけど好きなんだけど!超恥ずかしいっ!しかもこのイケメン二人に見つめられたら尚更言えないーーー!どうしよう!!!
…
「み、三階…お前…もしかして…凄く…分かりやすい?」
「あーらー…あははマジで?三階、顔真っ赤だよー!かーわーいーーーー!!」
「ええ嘘っ!!…っわ!」
い、息が詰まる!
目一杯成谷先輩に抱きしめられてしまった!
「おいこら…いつから?いつからだよっ!!クソ!教えろ!」
「苦しい!って僕、何も言ってない…し!」
「……てっきり…横溝のこと好きなのかと思ってた…」
「え、幸は…大切な友達…ん…」
「…」
…さっきの…優しい触れるキスとは違う…荒っぽい強引なキスに頭が真っ白になった。
再びソファーに押し倒されて身体が重なる。
唇が湿ってくるし呼吸ができない。走馬灯のように以前した長くて甘いキスが思い出され身体がじわんとした。
「は…の…」
「…」
舌が絡んで吐息が熱くて掻きまわすように口内を侵される。
深くて…キスってこんな…こんな気持ちイイの…
…どうしよう…
嬉しい…
…
「いいなぁ…そんな濃厚キス…俺も三階としたーい!三階可愛い!」
…
!!!
そうだったー!
香乃先輩が目の前にぃぃぃ!!!
「一智…お前邪魔…帰れ」
僕を抱きしめたまま、ジロリと成谷先輩が香乃先輩を睨む。
「いやいや、太我には悪いけど、三階は連れて帰るよ。残念だけど、その続きはどうぞまた今度」
「はぁ?」
「もうすぐ点呼の時間!あいちゃんに超!超怒られるよ?それに三階は風紀委員!引っ越し早々怒られたくないよな?」
「は、はいっ!!!」
「…マジか…」
寮では毎週、風紀委員の抜き打ち点呼がある。
抜き打ちなので当然いつ来るか分からないけれど、どうやら先輩方は生徒会長野宮先輩からいつくるのかを毎回教えてもらっているようで…
「……仕方ない…あいつ怒るとマジ怖いし、2度と点呼時間教えてくれなくなるかも知れないからな」
流石に成谷先輩も嫌々僕を離してくれた。
…野宮先輩…って凄い…
ポフポフ頭を撫でられる。
「続きはまた明日…な?三階」
「…?」
つ、続きぃ!?
「はいはい!もう触るな!三階くん!一緒に帰ろう帰ろう」
むぎゅ!っと今度は香乃先輩に抱きしめられてしまった!
「…一智…気軽に三階に触んなって」
「は!早速束縛?嫉妬?小さい男だな。これくらいはいいんだよ!ね?三階」
「え、あの…」
「じゃぁまったな!太我くーん!」
「あ、あの先輩…お休みなさいっ!」
「…おやすみ」
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