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第86話

「せ、先輩……」 「なぁに…」 耳元で囁かれると、先輩のいい声がダイレクトに脳内に響き身体がビクリとしてしまう。 「あんまり色んなところ…触らないで…ください」 「いやだ…いっぱい触りたい…ね、三階…」 二人向き合い抱き締め合う…名前を呼ばれ先輩の顔を見上げると、すぐに重なる唇。 はむはむと唇を甘噛みすると、ぺろりと舌で舐められた。恥ずかしいのに、目の前の成谷先輩から目が離せなくて…この距離感…何度もあるけど、ずっと見つめていた。 ちゃんと見ていたいと思った。 「舌出してみて」 そう言われたでぺろりと出してみると、先輩の舌がそれに重なり何とも言えない感触に鳥肌が立つ。 弾力のある感触と温かさが気持ちイイのか気持ち悪いのか考えていると、スルリと舌が口内に入り深い所まで侵入し掻きまわしはじめる。 そうなると何がなんだかわからなくなり、動揺しながら自分も恐る恐る舌を絡めた。 先輩の舌が絡まり吸い上げられるともっと欲しくてたまらない…んだけど… 「うあっ…」 「おっと…あはは…足にきた?」 キスに夢中になって、身体がフニャフニャになってしまい足が縺れてバランスを崩してしまった。 ただでさえ今日は走って足が痛いのに、こんなことされたらもう立っていられないくらい気持ちが高ぶり不思議な感覚になっている。 「ちょっと足が痛くって…すみま…って!またぁ!!」 言い終わらないうちに抱っこされてしまった。 昨日と同じお姫様抱っこだ。 「あれだろ。マラソン走ったから足痛いんだろ?」 「え、なんで」 「見てたから知ってる。25番だっけ?」 「…に、………28番…です。って!見てたんですか!あれ!」 …訂正するのも恥ずかしい番号だ… ってそう言ってるうちに降ろされたのは大きなベッドの上。一度お世話になった一人で寝るには広い大き目のベッド。 「見てたよ…28位…それもある意味才能か?どうやったらそんな順位がとれるかアドバイスが欲しいな」 笑いながら僕の眼鏡をするりと外して近くの机の上に置いた。 眉間に軽くキスされる。 「成谷先輩はマラソンいつも何位ですか」 「…控え目に言って1番だよ」 「…酷い…どうやったらそんな早く走れるんだ…」 「今度…教えようか?」 「絶対嫌です!って先輩…何してるんですか…」 「何してるって…見ての通り脱がしてる」 シュルリと僕のネクタイを外している先輩は楽しそうにしていた。 え、 「あの?」 僕のシャツのボタンがひとつずつ外されていく… 「…後でちゃんとご飯作ってあげるからな。三階は少し太らないと……」 腹のところまで外されたシャツの隙間から先輩の手が入り胸に触れる……あっと思った瞬間再び唇を塞がれ…自分の身体がベッドへと沈んで行った。

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