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第103話

「先輩っ!そこ駄目っ!!!」 「!」 三階先輩の後ろに回って、思い切り入口の方へ先輩の身体を突き飛ばした…! と当時に後ろのトイレの個室から飛び出す人影…とすぐ視界に飛び込んできた青い容器。 !!! バッシャアァアァアーーー!!!!! バケツの中に入っていた水が全身にかかり、制服が濡れて冷たい。 それと何か…雑巾みたいな臭い。 青い色のバケツが床に跳ね返り、ガコンガコン転がる音がトイレ中に響く。 「いやー!悪い!悪い!…わる…い?…大丈夫…か?ってあれ?」 …あーあはは… 三階先輩じゃなくて残念でしたー…! 冷たーい… 「千歳!!!どうした!大丈夫か!?」 「…う、うん、僕は…大丈夫…」 「っ!佳川っ!!?な、なんだこれ!」 大きな音に駆け付けた横溝先輩が、トイレの中の様子を見て驚いていた。 そうだよね…一面水浸しなんだもの。 次第にトイレの前には野次馬生徒の人だかり。 「…はぁ……三階先輩が無事で何よりです…はぁ…良かったぁ…あ、汚れちゃうんんで入って来ちゃ駄目ですよ?」 ニコッと笑って見せたら、呆然としていた三階先輩が俺の忠告を無視して駆け寄ってきた。 「あ!駄目駄目っ!先輩濡れますから!」 「黙って!佳川じっとしてて!頭から出血してるから。…ぱっくり切れてるな…とりあえず、保健室へ急ごう」 え? そうなの? 見ると濡れた床にぼたぼたと垂れる水に滲む赤い滴。 それが自分の血だと理解できない。 全然痛くないからだ… 何々…切れてるの俺の頭? 「あの…」 「事情はあとでゆっくり聞くから!…まずはちゃんと処置してもらおう」 びっくりするくらいはっきりとした言葉で言われて何も言えなくなってしまった。 …今の三階先輩が言ったの? それから保健室へ行って診てもらったけれど、ぱっくり切れていて出血が止まらず、すぐに病院で処置してもらうことになってしまった。 バケツが思い切り当たってしまったようで、結局頭部を8針縫うことになってしまった。 「ちょ!鈴ーー!あんた何やってんの!」 「わあぁ!母さんやめろ!苦しい痛い!!」 半泣き状態の母さんに何が起こったのか色々聞かれたけど、心配をかけたくもないのであくまで事故だということを説明した。 しつこい!泣きすぎ!恥ずかしい!! 病院の一室で処置をしてもらい、脳の検査もしたけれど特に異常は見受けられなくこのまま帰宅が許された。 次の診察まで自宅でも寮でもどちらから通学してもいいと言われたけど、俺は寮に帰る方を選んだ。 …家すぐそこだから全然帰れるんだけど、煩そうだし面倒くさい… でも寮に戻る前に一度家に着替えを取りに帰った。 「これ!持って行きなさい!お世話になった先輩に渡して!」 「え!」 大量のパンを手提げ袋いっぱい持たされてしまった。 これ!多すぎだろ! 日が暮れて暗くなった頃、寮へ戻るとそこはいつも通り何も変わらないといった感じだ。 もう皆夕食も食べて各部屋で各々過ごしているんだろう。 あの後あのバケツを放ったヤバい先輩はどうなったんだろうな…勢いよく投げつけやがって… 傷が今更ズキズキと痛む… 頭に痛みを感じながら部屋へ向かうと俺の部屋の前に誰か立っていた。 …

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