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第106話
「……先輩…どうしたんですか。まだ夜中ですけど…」
慌てて部屋着姿の横溝先輩を部屋の中に招き入れた。暗闇に紛れる先輩の顔は青白く美しさが際立って見える。
「…うん、知ってる…」
「…」
「…なんて言うか……大丈夫かなと気になって…佳川、一人だろ?」
「はい」
「…体調もそうだし…ベランダの件も気になって…寝れてないんじゃないかと思って」
「あぁ…あれですか。大丈夫ですよ?鍵してあるし、俺丈夫なんで!」
「そっか…よかった……」
まさか、まさか横溝先輩が心配して様子を見に来てくれるなんて夢みたいだ!!
しかもこんな時間に!
…幻聴じゃなかった!
起きてて良かったぁ。
あ!
「あーえぇとでもまだ頭がズキズキしてて…イタタタ。今さっき痛み止め飲んだんですけどちゃんと寝れるかどうかわからないなぁって思ってて。ベランダの件もあれだし怖いし?えーとだから…先輩が添い寝してくれたら俺とっても良く寝れれる気がしますっ!!」
そうだ!
このチャンスを逃しては駄目だ!
そう思い一生懸命寝れないと横溝先輩にアピールしてみた!
もしかしたら添い寝してくれちゃうかもしれない!!
「…」
「…」
「ぷ、ははは…ウケる。何それ」
!!!!
わ、笑われた!
「す、すみません…言ってみただけです。だって憧れてる先輩がこんな時間に来てくれたんだから嬉しいしチャーンス!って思うじゃないですか」
「……こんな俺に憧れるとか結構変わってると思うけど……いいよ」
「え」
「一応そのつもりで来たから。……結構心配してるんだぞ?わかるか?」
「は、はひ…ほ、本当に…添い…寝…」
きたーーーーー!!!
やったぁ!
嬉しいぃ!言ってみるものだ!
添い寝!
横溝先輩と添い寝だって!!!
「…おい…そんなにくっつくなって…」
「う、嬉しい!」
嬉しすぎてでへへと先輩に抱き着く。
いい匂いがほんわりしてさらに胸がときめいてしまう!
男二人で寝るには小さいシングルベッドだけど寝れないことはない。
暗闇の中そっとベッドに横になる…キシっと自分でない人が小さく音を立てるのに違和感があった。
違和感だらけで夢なんだと思う。
だって俺のベッドに俺の隣で横溝先輩が横になっているんだもの…
「たぶんこれは夢…」
「…は?」
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