110 / 142

第110話

「…俺ってミーハーなんです。気になった人のことは、何でも知りたくて追っかけちゃうんですよ。追いかけ過ぎて回りが見えなくなっちゃってよく母さんに怒られます。カッコいい成谷先輩と野宮先輩…美人な香乃先輩はスゴすぎだし、三階先輩はオーラが違っていて柔らかくてほわーって感じです。横溝先輩は……何か…」 「…」 「危なっかしい……」 「……は?」 「へへ…失礼ですよね…すみません。勿論綺麗だしカッコいいし憧れてますよ?あの時助けてもらったし…だけど先輩を見てれば見てるほどなんか危なくて……儚すぎるんです…守ってあげないとって思います…って…おーい、聞いてますか?先輩」 「……お、お、お前……そんなこと考えてながら、俺のことストーカーみたく追いかけてたのか……!」 「はい!ストーカーじゃないですけど!」 隣で横になっている横溝先輩に正直に打ち明けた。 確かに初めは悪戯されているところを助けてもらい、なんてカッコいい素敵な先輩なんだと憧れの熱視線を送っていた。 でも先輩を見れば見るほど…三階先輩の隣で消えてしまいそうで、憧れつつもどこか不安にさせられていた。 「俺、先輩のこと守ってあげたいって思ってます」 「ば、馬鹿!何からだよ!」 「いでっ!」 思い切りデコぴんされておでこが痛い。 …先輩が隣で悪夢に魘されていたのは直ぐに気がついた。 口から振り絞るように零れてくる声が切ない。 苦しそうにしている先輩を隣で感じていると、どうにかしてあげたい気持ちと自分なんかじゃ駄目だという無力感…今の先輩を支えてあげられる…支えてるのは恐らく三階先輩だ。 …俺は三階先輩ではない… 二人の関係は友人…親友なのかもしれないけれど、それ以上の信頼関係があるのか二人でいるときの雰囲気は独特で甘くて… … …ぶっちゃけ超…羨ましい…あんなの醸されたら割り込もうとか邪魔してやろうって気がなくなる!だったらずっと見て萌えてやる! 本当…ずっと見ていたい。 「後輩のくせに…!そんな生意気なこと言って…!」 「い、痛いれすから頬っぺた引っ張らないれ…」 狭いベッドに二人向き合うように横になり、先輩に頬っぺたをぎゅうぎゅう引っ張られて痛いやら嬉しいやら…恥ずかしそうに怒る横溝先輩が可愛いーー!可愛いって言ったら顔が赤くなって可笑しくて笑ってしまった。 「か、揶揄うのもいい加減にしろっ!」 最後は本気で怒ってたような気がするけど全然反省しないから!! 先輩がね… 眠るのがツラいなら… 夜が怖いなら… こうしてふざけて合って、じゃれあって怒ってくれてる方がいいと思ったんだ。 これくらいしか俺には出来ない。

ともだちにシェアしよう!