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第116話
次の日、俺は事情を説明するのに寮の最上階へと呼ばれた。
その前に……
「はい、かけるぞー」
シャーーー!
温かいお湯が頭にかかって髪の毛を濡らしていく…
ドキドキ
嗅いだことのない良い香りが鼻腔をかすめ、直ぐに指が濡れた髪に触れ丁寧に俺の髪を洗い上げていく。
ドキドキ
傷口をさけて洗ってくれるのは有難いんだけど、裸の俺は緊張してずっとドキドキしっぱなしだ。
だって…だって!
横溝先輩が俺の髪を洗ってくれてるんだぞ!
あれからベッドの上で言い合いしたり、じゃれあったりしたら疲れてしまったのか、気がついたら二人とも寝てしまっていた。
朝起きてから直ぐ横溝先輩に「風呂に入れ」と言われたのだ。
ここは風呂は共同なので、風呂の支度をしてから向かうんだけど、頭の傷口が気になり頭は洗わなくていい?駄目!と言うやり取りを横溝先輩としたら、「じゃぁ俺が洗ってやる!」ということになった。
だから今俺はなんとおぉ!!
横溝先輩の部屋の風呂場で頭を洗ってもらっているわけで。さすが上層階の部屋は違うなぁ…
「……この頭から変な臭いがする。こんなテカテカした頭のまま最上階には行かせられない」
……昨日は風呂に入ってないけど、そこまでですか?
そこまで俺の頭って臭いのかな?
確かに起きたら髪がぺたりとしていて汗ばんでいたけど、そんなにですかー?
「先輩~この匂いイイ香りしますね~超癒されま~す!」
「動かない」
「…はい」
背中を丸めじっと髪が洗い終わるのを待った。
良く考えたら臭いって言われて良かったのかも…だって…横溝先輩の部屋に来れて横溝先輩が毎日入っているお風呂場に俺はいるわけで…今はむしろ臭くて良かった!
って思えてしまうわけで!
「…極楽~死んでもイイかも」
そう呟いた。
「ふ……じじくさいな…」
「…だって…嬉しいんだから仕方ないじゃないですか」
「……そんなに嬉しいかね」
「嬉しいに決まってます!いいですか!憧れの人の部屋に来れて!憧れの人が使っている風呂場で!し か も!その本人に自分の頭を洗ってもらっているんですよ!プライベート空間に潜入できるなんて…もう…思い残すことは何もない~……」
「流すぞー」
シャーーー
「」
人の…人の話をっ!
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