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第120話
「あ、君が新入生の佳川…ふーん…そうなんだー…何でそんなに横溝にくっついてんの?はいはい、もっとこっちおいで」
「え!え!?」
香乃先輩が佳川の隣に座り、ニヤニヤしながら佳川のサラサラの髪を撫でている。
この状況に何が何だかわからなくて、顔を真っ赤にしてフリーズしている佳川と、その様子に少しムッとしている幸がいた。
…わぁー新鮮…
幸のそういう表情、初めて見たかも…
香乃先輩は佳川のこと気に入ったみたいだ。
香乃先輩は好き嫌いがハッキリしているけれど、感覚的に僕と好みが似ている気がする。
佳川は気に入るだろうと思ってた…
「ほら、やっぱり香乃先輩も気に入ったでしょ」
隣にいる成谷先輩にこそっと耳打ちした。
ついさっきも「香乃先輩は佳川のこと気に入ると思う」と話したばかりだった。
「良くわかるな…」
「まぁね」
目の前でわちゃわちゃしている様子を、傍らで無表情に眺めている野宮先輩が…怖い。
野宮先輩には色々迷惑をかけていて頭が上がらない。
「さ、では昨日起きた事件について、それと佳川が受けている嫌がらせについて話していくぞ」
「え、お、俺の…で、ですか?」
「佳川、最近陰湿な嫌がらせを受けているらしいな。ベランダ庭の様子は先ほど見させてもらった。嫌がらせはクラスメイトから…横溝からはワイセツ行為に関して聴かせてもらった」
「!」
「図書室の出来事を報告した。当たり前だろ」
…
佳川に起きたことは幸から聞いていた。
自分と同じ目に合っていた子を見過ごすことは出来なかったと…あの子は俺と同じで自覚がないから危ない…そうも言っていた。
…確かにそうなんだと思う。
佳川は自分が他の生徒よりも目立っているということをわかっていないようだ。
幸の美しく儚い容姿は目を引く。
でも幸は自分の容姿が周りからどう見えているのか興味がなかった。だから細田に目をつけられてしまったのだ。
佳川も幸とタイプは違えど目立つことは確か。
サラサラの栗毛にパッチりとした丸い瞳は可愛らしく、好奇心大勢なのかいつもキョロキョロして何かを探しているようで、小動物や小型犬を連想してしまう。
僕たちの後をつける佳川の姿は正直丸見えだったし、他の生徒も気がついているだろう。
そんな姿が他人には愛らしく見えていることを本人は知らない。
でも…
ここでは目立つ行動は良くない。
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