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第122話
「こら、まだ話の途中だ。一智、離してやれ」
キリリとした声にハッとする。
それと同時に香乃先輩の腕からも解放された。
「で、碧人…犯人の目星はついてるんだろう?」
成谷先輩の落ち着いた声はその場の緩んだ雰囲気をリセットしてくれ、思わず俺もソファに座り直した。
「…まぁ、実行犯かどうかはわからないけど…ある程度な…それ言った方がいいか?」
「…」
「…」
成谷先輩と野宮先輩の間に微妙な緊張感が漂っていて…どれがどうにも…怖い…
なんだろう…成谷先輩も犯人に心当たりがあるのだろうか…
「……僕が言おうか?」
その緊張を断ち切るように三階先輩が言葉を切った。
「もしかして、僕に気を使ってくれているのかな?…って思うと、犯人は粉川じゃないの?」
隣に座っている成谷先輩を見つめながらそう呟いた…
?
粉川?
「…あいつか…」
ため息をつきながら横溝先輩が顔をしかめる。
横溝先輩だけじゃない…俺以外はその粉川っていう人を知っているみたいで、三階先輩以外各自微妙な顔をしていた。
「彼…ちょっと変わってるし前科があるしさ。もしかしたら成谷先輩のことまだ好きなのかも…そう思うと僕のことが邪魔で仕方がないのかもしれない」
「…もしそうなら顔面パンチじゃ許せないな…千歳にあんなことをするとか…いい度胸してんなぁ…潰すか……」
……
あわわわわ……
思わず横溝先輩の腕をきゅっと掴んでしまった。
目の前の成谷先輩の笑顔がとびきり甘くて、でも言ってることは…怖い…ほ、本気で言ってるのかな…
「よ、横溝先輩…粉川って…誰ですか?」
「…粉川…粉川秋って言って俺と三階と同じ二年だよ。ちょっと…そいつとは前に色々あって…」
「ほ、ほう…」
こがわ…あき……
「太我の元恋人ー!なんちゃってだったけどね」
「え!!」
香乃先輩からの爆弾発言に思い切り反応してしまった俺は、成谷先輩と三階先輩の二人をどう見たらいいのかわからず焦る。
「……っとに…恋人じゃねぇって言ってるだろ」
「でも…一時でも関係はあったんだよね?」
「…」
「…」
「…何…千歳…嫉妬してるの?」
「…まぁね」
「マジ?嬉しいな…あんなカスに妬くとか可愛い…関係…あったけど…知りたい?」
「……ん、知りたい…」
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