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 第1章-2  「花音…ごめんね、こんなお母さんで。あなたの苦しみ全てを分かってあげられると思ってはいないけれど、お母さんだけは、あなたの味方だからね」  玄関で真新しい高そうな制服に身を包み、大きなキャリーバックを傍らに置いたボクに、母さんは泣きながらそう言った。  俺は今日親元を離れ、国が監視する全寮制の男子校へ向かう。  「お前は、お前の意思を大切にして生きていけ。国がどうとか責任がどうとかはお前には関係ない。お前がしたい事、したい人生をしっかり歩め。母さんだけじゃない、父さんも味方だ」  父さんは、眉間にシワを寄せて手を強く握りながら言った。きっと一番抗議したのは父さんなのだろう。  実験体として、この13年間を国から監視されて生活してきた。とは言っても月に一度の定期検査以外に干渉されることは無く、ボクは厄介な病気になってしまったなぁ、と言う心境でいた。  自覚なんて芽生えるはずもなかった。  両親の意向で、この身体のきちんとした説明らしい説明を今まで聞いた事がなかったのだ。  この身体が国に、世界に望まれたモノで、しかし両親からは心の底では望まれていなかったのだと自覚したのは、数ヶ月前、中学3年生の頃だった。

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