4 / 14
004
第1章-4
「それじゃあ、ボクもう行くね」
「いつでも帰って来て良いんだからね。電話も、メールも、しちゃいけない決まりなんかないんだから」
「うん、ありがとう。母さん、父さん、バイバイ」
永遠の別れじゃないから。ボクは旅行に行くみたいに、笑顔で家を出た。泣き崩れる母さんを同じく鼻をすすりながら宥める、父さんの声を背に。
「……バイバイ。」
ボクはこれから陵北学園へ入学し、国の希望通り、そこで伴侶を探す事になるだろう。その為の全寮制だし、男子校なんだ。在籍する生徒は皆頭の良いエリートや、政治家や芸能人の息子ばかり、相手に不足はないだろう。暗にそう言われているような物だ。
「あ〜あ、初めて付き合う子は、ボクよりも背が低くて可愛くて、守ってあげたくなるような女の子が良かったなぁ…」
運命とはなんと残酷なものか。抗えないのなら、せめて良質な人生を送ってやろう。お前達国が望む結果は最低限出してやる。ただしボクの人生には絶対に干渉させない。
ボクと、ボクが産むはずのその子はボク自身で守る。国の研究対象になんかさせない。犠牲になるのはボクだけで良い。
未だ見ぬボクの子供に、こんな惨めな、辛く苦しい道は絶対に歩ませない。
ともだちにシェアしよう!