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 第1章-7  「エレベーターで2階に行って、一番手前が寮長室だから。部屋とかルールとかは寮長さんに聞いてね」  「はい、案内ありがとうございます!」  寮の前まで案内してくれた警備のオジサンは、まるでここまで一緒に散歩をしてきた友人かのように、手を振って笑顔で戻って行った。  不安ばかりだったボクの心が、ちょっぴり解れた気がする。  気合を入れ直して寮長室の前に進んだ。窓はスモークガラスで、中の様子は全く分からない。ドア横に“在室”と書かれたプレートが下がっている。あんまり物音は聞こえないが、寮長さんは中に居るらしい。  「失礼しまーす、」  「あ、カノンくんだね。丁度良かった、今からこの無愛想な子に寮の説明をするところだったから、カノンくんも座って」  ドアを開けて顔を覗かせると、寮長さんらしき人に優しく手を包まれて、そのままソファに座るよう促された。ボクの隣には同じ制服を着た男の子。ムスッとしていて凄く機嫌が悪そう。  「無愛想ってなんだよ、俺は元からこんな顔だ」  「顔の作りの話はしてないよ、表情がいっこも変わらないって話だよ」  寮長室の中は意外と素朴な感じで、向かい合ったソファもローテーブルも使い古されたような痛みが見られる。その奥には大量にファイルの積まれたボロいデスクも……  寮長さんらしき男の人は、少し長い髪を後で束ねていて、優雅な雰囲気から優しそうなのが伝わってくる。  隣の男の子は…、キチッと制服を着た僕とは違って、シャツのボタンは胸元が見えるほど空いているし、ズボンなんかはパンツが見えちゃうくらい下げてる。変態なのかな、関わらないようにしよう。と頭に叩き込む。

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