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 第1章-8  「さて、まずは自己紹介からだね。私はこの学園で寮長をしています、櫻です。生徒の皆からはさくちゃんとかさっくんって呼ばれてるから、気軽に好きな呼び方で呼んで」  ボクの分の紅茶や資料を用意してくれて、改めてソファに座り直した寮長さんは、櫻と名乗った。呼ばれ方からして、この学園の生徒と先生の距離は近いんだろうと伺える。  「あ、ボクは真白花音です。中学ではシロとかカノンって呼ばれてました」  「うん、よろしくね」  「はい!」  「………」  櫻さんに視線で促され、ボクも流れで自己紹介をした。あだ名まで必要だったのかはわからないけど……。  次は隣の変態さん、チラッと横目で見ると、自己紹介する風もなくスマホを触っている。僕と櫻さんの会話も聞いていないようで、なんだかとても居心地の悪さを感じる。  「ヒナくん?次は君の番だよ」  「そう呼ぶなっつってんだろ」  「わぁ口が悪い。花音くんはこうなっちゃダメだよ?」  「あ、はは…」  や、やりづらい……。  あの見た目でヒナくんって呼ばれてるのもそうだけど、全くこちらとの接点を持とうとしない姿勢に、どう反応したら良いのかあたふたしてしまう。  どうやらそれはボクだけらしいけど。

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