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 第1章-9  「まぁいっか、花音くんが来る前に自己紹介させたとこだったんだ」  「ムリヤリな」  「そうなんですね、遅くなってすみません……」  「んーん、花音くん実家を出るのは初めてだし、1人で新幹線とか、ドキドキしたでしょ」  「正直、ここまで無事に辿り着けるか不安でした…へへ、」  悪態つく“ヒナくん”さんには目もくれず、櫻さんはボクに笑いかけてくれる。肩や手に入っていた力が自然にするりと抜けて、なんだか安心する……。  「で、こちらは御園雛太くん。見た目も態度もこんなだけど、中身は雛鳥みたいに可愛い子だから、仲良くしてあげて?」  それに、この子もキミと同じだから……  最後にそう付け足した櫻さんは、なんだか哀しそうな、暗い表情に見えた。  “同じ”って何のことだろう。櫻さんがそんな表情になるようなことなのかな?  「じゃ、気を取り直して。まずは寮の説明から始めるね。資料の4ページを開いて下さい」  いつの間にか下がっていた視線を元に戻すと、櫻さんはもう朗らかな笑みを浮かべていた。何が同じなのかすごーく気になったけど、もう聞けるような雰囲気ではなかった。

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