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その1 あーんは基本中の基本

「え、と…今日は…その…ちゃんと、する…」 「ちゃんとする?えっちのこと?」 「えっと…こ…こ、こい…びと…っぽくする…から…それ、が、プレゼント…」 「恋人っぽく?」 「……こ、これ…」 まなは顔をちょっと赤らめながらも何かに挑むみたいな表情でそう言ってオレに『恋人のすゝめ』と書かれたやたらピンク色の大きな♥が表紙に描かれた本を突き出してきた じーっとオレを見つめとる なんか…睨まれとる気分なんやけど…眉間にしわよっとるし… ぺらぺらっと中を覗くとありがちな恋愛ハウツー本みたいな感じやった どうしたら男ウケするかみたいな… 正直まなが何をしたいのかはよくわからんかったけどきっとオレのためにいろいろ考えてきてくれた結果なんやろう まながしてくれることなら何でも嬉しい それに今日はあのアホ兄貴は帰ってこないし時間もたっぷりあるからえっちなら夜嫌というほどできる ちなみに兄貴対策としてちゃーんとチェーンも掛けとる 「で、まな、まず何してくれるん?」 「わっ…!!……あ…えと…えーっと…」 むーっとオレを見つめてたまなはオレが本から顔を上げて目が合うと一瞬びっくりしたような表情をして視線を泳がせてからパタパタとさっきまなが持って来たケーキを持って来た …………悪くないかも…… まなはなんだかあせあせしながらケーキを取り分けてる ケーキ食べるんやろか? 「………」 「……?…」 でもまなは一切れだけ切り取ってまた眉間にしわを寄せて何か考えている …? むーってなっとるまなが可愛くてちょっかいかけたくなったけどこの先どうなるかが気になったから黙ってみてたらまなが立ち上がってオレの隣にどすんっと腰かけた 「……あ……あーん……」 「!!」 まなはキッとオレを睨み付けたままフォークをプルプルさせてこっちにシフォンケーキを突き出してきた オレからやってって言ってやってもらったことはあったけどまなからしてくれたことなんてなかったから驚きで固まってしまう 「く、口あけろよ…あ、じゃ…なくて……えっと…た、食べて…?」 「………」 「あ、あーん…って…して…?」 まながカァァっと顔を赤らめ目線を逸らしながらオレの口にケーキを押し付ける いつもみたいにぶっきらぼうにならないように努力してるらしかった ………悪くない… ぱくっとまなの差し出す甘いケーキを食べながら頰が緩んだ

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