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杉田学と桜井千鶴
「…ッチ…んだよ…おいチビ!!もうミスすんじゃねーぞ!!」
「す…すみません…」
「………」
そう言って先輩は行ってしまった
へなへなと力が抜ける
こ…怖かった…
「えっと…大丈夫?」
「…ぇ?」
間抜けな声をあげながら顔を上げると黒い髪の男の子が立ってて私の顔を覗き込んでいた
……………
ボッと顔が赤くなった
そ…そうだ…この人が助けてくれたんだった…!!
「あ…あぅ…あ、ありが…ありがと…ご…ござ…ま…」
人とお話しすること自体慣れてなくてテンパっちゃって上手にできないのに突然男の子に話しかけられてうまく返事ができるはずもなかった
しかも…
か…かっこいい…!!
後で夏輝ちゃんに話したら「え~ちづ悪趣味ー」って言われたけどかっこよかった
ちょっとくるくるした髪と猫ちゃんみたいな目でなんだか暖かそうな感じ…
……これも夏輝ちゃんに「まったくわかんない」って言われたけど…
恥ずかしくってお礼しないとって思ったんだけどやっぱり恥ずかしくてあうあうと言葉にならない声をあげながら顔を背けてしまった
た、助けてくれたのに失礼だよ…
でもその男の子は優しくて私の隣にしゃがんでやさしく声を掛けてくれた
「大丈夫?その…あんなに怒鳴られたら怖いよな…」
「ぇ…あぅ…あ…」
「俺、コレ順番通りに並べとくからさ、今日はもう帰ったら?えっと…桜井さん…?」
「……な、名前…なんで…」
「あー…委員会のプリントに書いてたから…桜井千鶴さんだよね?同じ学年だしさ?その、よろしくね?」
「!!」
そうして私がぽかーんとしてる間に杉田くんはてきぱきと資料を集めて行ってしまった
しかもちゃんと私がばらまいた資料を順番通りに直してくれたらしい…
…名前…憶えられてた…覚えてもらえたことないのに……
私は杉田くんの言葉に甘えてその日は帰らせてもらった
一連の騒動を見てた子たちがほっとしてて少し悲しかったけどでも杉田くんに合えたからかなんだか気持ちがぽわぽわしててその日はおばあちゃんにも「ちづ、今日はごきげんだね」って言われてしまった
なんだか心が軽かった
明日ちゃんとお礼しよう…
そう思って迷惑かなと思ったけどクッキーを焼いてみたりしてドキドキしたままおふとんに入った
…杉田くん…杉田学くん…
後でプリントで確認した名前を心の中で繰り返してみる
ふふってなんだか幸せな気分だった
………甘い物…平気だと良いな…
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