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お礼のクッキー

「これ、お礼に?」 「……め…迷惑じゃなければ…その…」 「あ、ありがとう…!!」 次の日あんまり周りに人がいない時にこっそり杉田くんにクッキーを渡してみた それはもうめちゃめちゃ緊張した 高校の入試の時より緊張したかもしれない…上手に喋れなかったし…でも… ……ありがとうって…言われた…… ほっぺたが赤くなって胸が暖かくなる 杉田くんは嬉しそうな顔をしてその場で食べてくれた 「おいしいよ?桜井さん…料理するの…?」 「あ、っや…その…お、おばあちゃん…と…暮らしてて…それで…あの…」 「桜井さんが料理を作ってるの…?」 「そ、そう!!そうなの!!」 ぶんぶんと首を縦に振る 杉田くんにまで私の話し方がとろいからって嫌な思いをさせちゃいけないって必死だった その時はなんでかわからなかったけど嫌われたくないって、少しだけでもいい子だって思って欲しいってすごく強く思った す…杉田くんに『退屈な子』って思われたくない…!! 「そうなんだ…お、れも…その、一人暮らし…?みたいの、だからちょっとはできるけどでも…こんな上手にはできない…」 「そんな…」 「桜井さん、料理上手なんだね?」 「!!」 杉田くんがにこってしながらそう言ってくれる ほ…褒められた…!? も…もしかして私…す、すす…杉田くんに褒められてた!? ぼふんっとまた一気に体中があつくなった 嬉しいのと照れくさいのと恥ずかしいのとで興奮してしまって頭がぐるぐるする し…しかも……に、にこ…って…す、杉田くんがにこって… 胸の奥がきゅぅんとなるようなくすぐったいようなあったかいような変な感じだ… それに私すごくドキドキしてる…病気かも… ひゃーっと両手でほっぺを覆いたいのを我慢してきゅっと目をつむった また資料落としちゃったら大変だもん… でも杉田くんがさらに続けた 「そ、それでさ…桜井さん、その…お礼…っていったら変だけど…そのもしよかったら今日も桜井さんの仕事手伝わせて…?」 「え……えぇ…!?そ…そんな、す…杉田くんは自分の仕事終わってるのにもうしわけな……あっ…」 「あっ…」 ばささー!!っと私の腕から勢いよく資料が滑り落ちる ……わ…私のバカ… 私も杉田くんも同じような顔をしてた さっきまでの高揚感が消えてやってしまったと頭が真っ白になる 「……す、すすす、すす…すみませ…」 またテンパってキョドキョドしてしまう、それでも杉田くんは優しかった 突然頭にポンッと暖かい物が乗せられる 気付いたら杉田くんになでなでされてた 「え…え、え…?」 「俺は大丈夫だよ、ほらあの先輩に怒られちゃう前に一緒に直そう」 「え…え…」 杉田くんはまた私がきょとーんっとしてる間にてきぱきと資料を集めてしまった 一緒?一緒って言った?いっしょ…… またぼふんっとキャパオーバーした 一緒に…す、杉田くんと一緒に… もう心臓がドクドクなるのが止らなかった 杉田くんみるとどきどきどきどきする…なんでだろ… なんだかすごく胸の奥の方がきゅうってなってちょっとだけ悲しいような…そんなかんじ… この時はまだ私は自分の恋心に気付いてなかった

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