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すごい秘密
………杉田くんのおかげなの…お友達がちょっとだけ増えたのも…学校がちょっとだけ楽しくなったのも…ママとパパとちょっと仲良くできるようになったのも…
ギュッと杉田くんのパーカーを握って一生懸命話す
でもなんでか涙が出てきていっぱい目にたまって視界がぼやけてきた
恥ずかしいのか、悲しいのか、怖いのかよくわかんない
でも杉田くんはバレンタインデーの時と同じようにじっと私の話を聞いてくれた
「す…好き…なの…」
「………」
ぽろっと口からそれがこぼれた
思ったほど緊張しなくてすごく自然に…気づいたら出ていた
「好き…杉田くんの事が好きなの…」
「………」
言えた…
そう思った瞬間何故かぽろぽろ涙が止まらなくなった
なにかで胸がいっぱいになってあとからあとから止まらない…
やだ…杉田くんにおかしいって思われるよ…
無意識により強く杉田くんのパーカーを握る
目をつぶってみても涙は止まらなかった
杉田くんがゆっくり口を開く……
「………ごめん……」
「………」
「桜井さんの気持ちには応えられない…」
「………」
あぁ…
杉田くんは頭を深く下げていた
………フラれたんだ……また…
それを理解した途端ぶわっと今まで以上の量の涙が眼の奥から湧き上がってきた
ダメだ…
キュッと唇を噛む
いやだ…泣きたくない…前とは違うもん……なんとなく…わかってたもん…
もう全然前なんて見えなくてきっと夏輝ちゃんがしてくれたお化粧も落ちちゃってた
もしかしたらおばけみたいな顔になってるかもしれない
杉田くんが続ける
「………あの…さ……桜井さん、聞きたくないかもしれないんだけど、さ…」
「………」
「おれ…その…付き合ってる人がいて……」
………………
じっと泣かないように拳を握って立っているのが精いっぱいの私に杉田くんは優く、すごい秘密を教えてくれた…
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