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美香ちゃん歓喜
『そんなんさくっとどっか行って、さくっと落として、さくっと既成事実なりなんなりがあったらええねん、そもそもオレとまなかてそうやし…』
銀くんが去り際にそんな事を言った
俺の好きな人は俺の好きな人をそうやって手に入れたらしい…
だから…
「ねぇ若葉ちゃん、ちょっとコレ、行くの付き合ってよ」
「の、ノア先輩…?」
さっそく行動に移させてもらった
一年生の教室で目をパチパチする若葉ちゃんの前にさっき適当に見つけて拾ってきたチラシを突き出す
別に場所なんてどこでも良かった
若葉ちゃんと同じクラスの子たちが俺の方を見てひそひそ話したり女子がほぅ…ってため息をついてる…まぁ若干一名真顔でスマホこっちに向けて連写してた子がいたけど無視した
「今度の週末6時にココの近くの公園集合だから、遅れないでよ」
「え…コレ…って……」
「花火、こういう派手そうなの若葉ちゃんスキでしょ?浴衣、着てきてよね」
若葉ちゃんに花火大会ってチラシを押し付けると若葉ちゃんはそれを見てまた大きなくりっとした目をパチパチした
俺とチラシを見比べてる
「花火ッス?」
「そうだよ」
「チョコバナナあるッスかね?」
「知らないけどあるんじゃないそれくらい…」
「わたあめもッス?」
「だから知らないけど多分あるでしょ…」
きょとんとしてそんな事を聞く若葉ちゃんに適当に返事をする
すると若葉ちゃんはぱぁ…!!っと顔を輝かせて俺の方を見た
「行くッス!!」
「……そう…」
若葉ちゃんはキラキラ目を輝かせて嬉しそうだった
あれ…なんでちょっと嬉しくなってんだ…俺…?
こんなに食いつくと思わなかった…
でも若葉ちゃんはとんでもないことを言いだした
「楽しみッスね~、あ!!健斗さんも呼びましょうよ!!あと猛さんと学さんと兄貴も…」
「だ、ダメだよ!!」
「!!」
思いのほか大きな声が出てて焦った
このとき例の若干一名のスマホ連写女子が鼻から鮮血を噴き出して倒れたけどそれどころじゃなくて無視した
正直他の奴らがそっちに注目してくれたから助かった
若葉ちゃんはビックリして動きを止めている
俺は俺でなんであんな大きな声で慌てたのかわからなくてびっくりしてた
「え…っと…ほら、皆それぞれでさ予定とかあるでしょ…」
「……あぁ!!そういうことッスね!!オッケーッス!!ノア先輩さすがッス!!気が利くッス!!じぇんとるまんッス!!」
「………Gの発音が違う…」
「英語苦手ッス!!」
若葉ちゃんはおバカだからこんな苦しいごまかしもあっさり信じた
でも俺自身は誤魔化せてなくてまださっきの自分の行動に驚いている
俺…やっぱりおかしい…crazyだよ…
とにかく今週末…
俺はこうして若葉ちゃんとdateの約束を取り付けた
さくっと落としてみせるよ…
まだ驚きでドキドキしている胸にそう誓った
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