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一方エー玉

花火を見るために俺と若葉ちゃんはお祭りの少し外れの方へ移動していた 俺がてくてくと歩いてその後ろを若葉ちゃんがパタパタとついてくる 「………」 「………」 若葉ちゃんは相変わらずじっとオレを眺めながらついてきて俺が振り返ると顔を逸らす こんなのがしばらくずっと続いていた ……なんなのホントに… 「………」 「………」 ほらまた… 逆に俺がじっと見つめ返すと若葉ちゃんはしどろもどろになってしまってう そんな若葉ちゃんにイライラする… そしてまた俺が前を向いて歩きはじめるまた若葉ちゃんが俺を見つめてきた ……はぁ…ほんとに…まったく… しびれを切らして一旦足を止めてからクルッと若葉ちゃんの方に向き直った 少し驚いた顔の若葉ちゃんと目が合う 「ねぇ…若葉ちゃん…」 「へっ!?……あ…は、はい…?」 若葉ちゃんが声を裏返らせて返事をする 若葉ちゃんは一瞬俺と目が合うと視線を泳がせてすぐに逸らしてしまった そんな動作に余計イラッとしてそのまま少し厳しい口調で続ける 人がせっかくデートに誘ってさ優しくリードしてあげてたのに、失礼じゃない? しかもこの俺がだよ? 若葉ちゃんをわざと威圧するように腕を組んだ 「すっごいイラつくんだけど…なんなの?言いたいことあるならいいなよ」 「…な、なにが…」 「わかんないの?さっきからちらちらこっち伺って俺と目が合うと逸らしたり俺を避けることだよ」 「…………」 「ほら、なんかいいなよ」 「………」 はぁっと溜息をつく 若葉ちゃんは委縮してしてシュンとしてしまった 地面を見つめて頭の上にしょげたような犬の耳が見えそうだ 「若葉ちゃん?」 少しだけ声を優しくして再度問う そっと少しだけ顔を上げて俺を確認する若葉ちゃんはしかられた子犬みたいでちょっとかわいかった 「…………の、ノア…先輩が……」 「俺が?」 「そ…その……えと……」 「………」 若葉ちゃんの顔を覗き込むと若葉ちゃんの顔が真っ赤になってもっとしどろもどろになる ………? 俺…?

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