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日常
「え~!!じゃあ若葉ちゃんと志波君は付き合うの?」
「違うッス!!『お友達から』ッス!!」
「おぉ…なんかかっこいい!!若葉ちゃん大人みたい!!」
「じゃあ…健斗さんも一回お友達からに…」
「………若葉…縁起でもないこと言うんじゃない…」
「あっ!!猛さん!!お疲れ様ッス!!」
「……頭も下げなくていいって言ってるだろ…」
花火大会からしばらくたった昼休み
久々に若葉ちゃんが裏庭に来ていた
皆で円形に座ってそれぞれ昼食を食べている
「ちょっと若葉ちゃん調子乗んないでよ…まだ『お友達』なんだからね…just friend、ただの友達だよ」
「おい、志波なんでお前がまなとオレの間におんねん、どけや邪魔やねん」
「あーん、銀くん辛辣~でも好き~♥今から銀と学の間に入れてくれるって言うならすぐにでも……」
「アホか…まな、こっち側来や」
「………銀変なことするからやだ……」
「………」
そしてなぜか志波もちゃっかり混ざってた
うっとおしがる銀にぺたーっと体を寄せてニコニコしている
おかしいな…俺が聞いたのは志波が若葉ちゃんの事好きになって告白したって話だと思ったんだけど……
ちらっと向かいにすわる猛の方を見てみると猛も困惑してるらしい
って言うか一応自分の大事な後輩なわけだしそれなり心配なんだろう
なんか…父親みたい…
でもそれを志波に聞いてみても「学と銀くんは好き、若葉ちゃんはわかんないだよ?」ってさも当たり前のように言われて余計困惑するだけだった
しかも若葉ちゃんはそれに対してまったく問題視してないらしい…
ま…まぁ…若葉ちゃんがいいなら?いいのかな?
猛は『不健全…いや…でも…』とかブツブツ言ってて余計に父親みたいだったけど最終的にはとりあえず納得したらしい
「いや~こんな形になるなんてね~お兄さんもビックリだよ~」
「………兄貴も…なんでおんねん…ここ学校内やぞ……」
「公開授業週間だって聞いたから…金、きちゃったテヘッ♥」
「死ね…」
「銀が聞いたのに!!」
そしてさらになぜか金さんまでいた
志波とは逆側の銀の隣に座ってこれまたぺたーっとぎんに体を寄せている
こっちを見て助けを求める銀の視線を無視した
……ちょっとかわいそうな気もするけど…俺まだ許してないんだからな…
あ、あんな…外で…あんな、こと……
金さんは銀の誕生日以来フラッとどこかにいなくなっていたけどこの間の花火大会の時に屋台でバイトしているのをその…まぁ、行為の後疲れた俺のために水を買いに行った銀が見つけた
でもまた銀の家に居候するのかと思えば『いい住処、見つけたんだ~』なんて言ってまたふらっと出て行ってはふらっと帰って来る生活を繰り返しているらしい
この話をしてる時に志波がはぁ…っと溜息をついた理由を俺は知らない
……ちなみに金さんが帰ってきたときに何度か銀としてるとこ見られた………
俺に助けてもらえないと諦めて二人にもみくちゃにされげんなりしている銀を横目で確認する
俺は俺でいろいろあったけど結局その後桜井さんは何事もなかったみたいに接そうとしてくれてるし実ちょっとだけ不安だった俺と銀の事も誰にも言ってないらしい
とにかくこうしていつもの日常に戻った
俺の左側でぎゃーぎゃー言ってる銀たちやまだブツブツ言って首を捻ってる猛、楽しそうにお互いのお祭りの話をする健斗と若葉ちゃんをぐるっと見回す
……いいな…
漠然とそんな事を思った
居心地がいい…このままずっとこんな風にみんなで過ごせたらいいななんて…
甘い考えだってわかってたけどちょっとだけそんな風に思った
9月、気づけばもう卒業まで半年だった
【花火大会編 おわり】
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