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恋人のすゝめ ♥美容編♥
「……あ、あった……」
ごそごそといつもめったに使わない押入れの中にある箱を漁ってソレを発掘した
いつかの時に健斗に勧められて銀のためにって買った本…
表紙には大きなピンク色のハートと『恋人のすゝめ』と書いてある
「えっと…確か…美容編とか言うのに……」
うっすらとほこりをかぶったそれを手で軽く払ってぺらぺらとページをめくる
自分の家で誰もいないってわかってるのになんだか気恥ずかしくて小さくなって調べた
内容はどれも安っぽい恋愛ハウツー本だけどこういうことに疎い俺にとっては大事な情報源だった
大きな文字で『♥美容編♥』と書かれたところでページをめくるのをやめて1ページづつじっくり眺める
「…………」
どのページでも頭に輪っかを乗せた天使から吹き出しが飛び出していてそこに美容についていろいろ書かれてた
「……『外見にはいつも気を使う事、体型を維持し清潔感を保って生活すべし』……」
その下にポップな字体で…
「…『特に体型はえっちの時などで相手が一番気にする要素ダヨ♥』……」
と書かれてた
………
銀に体がやわらかいと言われた時のことを思い出して顔が熱くなった
銀…そう言うのよく気付きそうだし…
ページをめくる
「『彼にかわいいと言ってもらえるための努力を惜しんではいけない』」
こうして俺は一晩寝不足になるまで『恋人のすゝめ』の美容編を読み込んだ
これぐらいの勢いで教科書読んだら少しは銀の成績に近付けそうだ
そして鏡の前に立って再度自分の体を確認した後に久々に体重計なんてものに乗ってみる
結果的に体重は昔と大して変わらなかったが筋肉が脂肪になってしまったのでふにふにしてることは否定できなかった
よし…ちゃんと元の体型に戻す…
あと…その、銀にすこしでもいいなって…思ってもらえるように…………なんて……
ぎゅんっと体中の体温が上がる
そんな事考えてる自分が恥ずかしい
でも気合いは入った
ぎゅっと『恋人のすゝめ』を抱いて鏡の中の自分を見る
鏡に映った少し頬の赤い俺がこっちを睨み付けていた
関係ないけど相変わらず目つき悪いな…
「ふにふにじゃなくす…」
目標を声に出して改めて決意を固めた
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