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追跡者

「……な……まな…」 「……ん…」 「まな起き、明日体育あるからジャージ取りに帰らんとあかんのんやろ?起きや……」 「……んぁ…んー……やー…」 「やーやないやろまな?起き」 「……んー………」 すぐ近くで声がする 少しづつ意識が浮上したけどまだまどろんでぽわぽわした心地のいい気分の中にいてなかなか意識が覚醒しない あ…ちかくに銀いる…きもちーなぁ…… 何となくそれがわかっていつも銀が寝起きにしてくれるみたいに髪を梳くように撫でて欲しくって銀の手があると思ったところにすりっと顔をこすり付ける でもそこには何もなくて虚しくベットのシーツにほおずりしただけだった 「……んー…うー……」 不満に声を漏らして頭をぐりぐりとシーツに押し付けるけど銀は触れてくれない 「ほーら、まなもう2時間半も寝たんやで?もう起きな夜寝れんようになるで」 それどころか銀はボフッと俺のかぶってた毛布を軽くたたいて立ち上がってどこかへ行ってしまった そこでやっと少し意識がはっきりして少しぼんやりするものののっそりと起き上がることができた あ…そっか…俺寝ちゃってて… ちょっとづつ現状が理解できてくる 俺が銀に触るなって言ったんだった… しばらくすると銀は俺に水を持ってきてくれた ゆっくりと水を飲む 「ほらまな、だんだん暗くなってきたしもう帰りや」 「え…あ……うん…」 いつの間にかそのまま帰る流れになってしまった 結局銀今日も触りたいって言わなかったな… 「ほなな、まな、また明日な~」 「…う、ん…じゃあね…」 そのまま普通に玄関まで送ってくれてそのまま普通に別れてしまった なんか…… もやっとしたものが胸にできる ちょっと…さみしい……………かも…… そんなもやもやを胸に抱えたまま駅に向かった ちょっとだけ銀に期待してた部分があったのかもしれない そのもやもやを断ち切るようにいつもより早歩きして駅まで歩く やっぱりちがう…別に………寂しいとかじゃないし…… この時俺の後ろを黒いパーカーの男がついてきてることに俺は気がづかなかった

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