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杉田家父
きゅうっとまなが後ろ手に俺の手の人差し指と中指を握る
ちょっと緊張してるみたいやった
そらそうやろ、急に帰って来た両親に男と付き合ってますって言おうとしとるんやし…
結局まなはリビングに入る手前までオレの指をにぎっとった
「あ、ほらお父さん、学来たわよ、あっちがお友達の頬付くん」
「………」
「おじゃましてます…」
リビングに入るとまなのオカンがせかせかと机に料理を運んでいて奥のソファにまなのオトンがおった
まなはオトンと少しだけ会話してからオカンに手伝ってくれってキッチンに呼ばれた
笑顔を忘れずに一通り挨拶する
なんや、ちょっと厳しそうやなぁ~
まなのオトンはほんわかしとるオカンとは対照的でメガネを掛けたちょっと気難しそうな人やった
まだ挨拶しかしとらんのやけどなんか睨まれとる気がする…
でも口元はまなに似とった
まなのオトンが口を開く
「……ま、学の父、です…?」
「………」
まなのオトンは視線を泳がせながらぎこちなくオレに挨拶した
杉田永(すぎたひさし)さんっていうらしく仕事は銀行員らしい…転勤も多いわけや
高校生相手に頭下げとる…
なんだかこのきょどきょどした態度が誰かと似てた
あ、ちょっと人見知りしとるまなに似とるかもしれん…
もしかするとこのオトンも人見知りなんか…
「ちょっとお父さん、頬付くん困っちゃってるわよ、そんな娘が結婚相手連れてきた時の父親みたいにかしこまらなくていいじゃない」
一瞬まながギクッとしたのがわかった
チラッとオレの方に視線を向けて困った顔をする
でももちろんまなのオカンのそのセリフに特別な意味なんてなくて会話は進んだ
「……そ、そうか…?」
「そうよ~頬付くんごめんなさい、うちの人学に似てちょっと人見知りが強いみたいで…」
「別に…俺が学に似たわけじゃないぞ…」
「別に俺人見知りじゃないし…」
「あらぁ~」
まなもまなのオトンも同じ顔しとる…
なるほど、まなはこのオトンから人見知りを受け継いだらしい
しかも『それに俺だってそんなに人見知りじゃない』と言うまなのオトンの耳はぴこぴこ動いとった
これも遺伝らしい
思いのほかかわいいオトンでホッとした
………まなの方がもちろんかわええけど…
キッチンにはまなとまなのオカンとオトンがそろっとった
なんかええなぁ~
チラッと自分の家族を思い出してみた
……異様に腹の立つ顔が真っ先に浮かんで早々にそんな回想はやめる
あいつはホットケーキしか作らんからあかん…
とにかくまなの家族は普通ながらに幸せそうな家族やった
おかげでなかなかええ雰囲気のまま食卓に着くことができた
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