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杉田家の食卓

夕御飯が進む 今日の食卓には焼き魚、わかめと豆腐のお味噌汁、野菜の煮物に漬物なんかが並んでて俺が一人の時は作らないようなメニューだったけど久しぶりの母さんの料理だった でも今は正直おいしいはずのその料理の味もしない 「それでね~山下さんが~……」 「へぇ~」 銀は愛想よく返事を返してたけど母さんが話す『山下さん』の話も耳に入らない… そもそも覚えてないし…山下さん… それより俺はこれから言わないといけないことがあるんだ……父さんと母さんに銀と付き合ってるって… そう思うだけで心臓がバクバクなって頭がくらくらした ただ幸い母さんは銀とのお喋りに夢中、父さんは銀の前で緊張しているのかいつもは見ないようなテレビ番組に見入ってるふりをしていて誰も俺を見てなかった………銀以外は…… 「ッ!!」 「………」 がっちがちに緊張してご飯もほとんど食べれず俯き気味だった俺の膝に銀の手が乗せられる 「………」 「………」 その手がぽんぽんと膝をたたいてくれて大丈夫だって言ってくれてるみたいで心強かった でも銀を見てみると銀は自然に母さんと話して…っていうか母さんの話を聞いて相槌を打っている ………こっち全然見てないみたいなふりしてるくせに… 俺の事を銀が心配して緊張してるってわかってくれたのがちょっぴり嬉しくて頬が熱くなった キュッと小さく銀の手の小指を掴む 銀が頑張れってみたいに手の甲を親指で摩ってくれた 母さんは食べ終わった自分の皿を流しまでさげているところだ ギュッと唇を噛んで決意を固める 言うんだ…!! 「あの…母さ………」 「あ~これ、この人たちこの間も何かのテレビで見たわ~」 「!!」 俺の口に出した小さい声は母さんの声にかき消されてしまった 母さんは台所から父さんの見ているニュースを見ている 父さんもいつの間にかカムフラージュのつもりで見てたそれに本当に見入っていて俺の声には気づいていないらしい ちょっと心細くなって銀の小指をキュッと握った 「ほら、なんか今度日本でもこういうのが認められる?みたいで…」 「このあいだもニュースでやっていたな…」 他愛もない会話をして父さんも母さんもテレビを眺めてた テレビの中ではアナウンサーにマイクを向けられた二人の外国人男性がインタビューに答えていた 下に日本語の訳が出ている 『二人で結婚するためにわざわざカナダまで移って来たんです~』 『俺達がもともといた国では同性での結婚も、パートナーシップも認められていなかったので…』 その二人の左手の薬指にはお揃いの銀色の指輪が光ってた タイムリーな事にそのテレビでは同性愛者の人たちについての特集が組まれてた

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