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誰がなんと言おうとも

あの後オレらはまなのオカンに呼ばれてオレが帰る時間になるまでそうしとった 「じゃあね~頬付くん、またいらっしゃいね~」 「ありがとうございました、お邪魔しました」 「いえいえ~おばさんも久しぶりに若い子と話せて楽しかったわ~」 頭を下げてまなの家を後にする まなが駅まで送ってくれるらしい まなのオカンはオレたちが見えなくなるまで玄関の前に立っていた 「……………」 「……………」 しばらくお互い何も話さないままゆっくり歩く もうそろそろコートを降ろさないといけないかもしれない さっき部屋で体を離したまなはちょっと赤い目をしててまだ不機嫌だったけどもういつも通りのまなに戻っとった つんつんして長い間くっついてたのが恥ずかしかったのかちょっとだけ照れてて可愛かった さすがにまなのオカンとオトンがいる家で押し倒したりはせんかったけど正直おらんかったら確実に押し倒して3ラウンドぐらいはしとった… チラッとまなの方を見るとまなと目が合った まなのオカン似の大きな目がぱちぱちっと瞬いてから目を逸らす 耳が赤くなっとった きっとこういうとこはオトン似なんやろう 「まなのオカンとオトン、ええ人やったな」 「……そうか?別に普通だろ」 「二人ともまなと似とってかーいらしかったよ?」 「……逆だよ、俺に似たんじゃなくて俺が似たんだ…」 まなはそんな事を言って可愛いって言われたことを誤魔化しとった 首の後ろを触るふりをして手を持っていって顔を隠そうとしとる かわええ… そう思ったら勝手に体が動いてまなの赤い頬にキスしとった まなの顔がもっと赤くなる 「なっ…!!や、やめろよ!!外だぞ!!」 「えー…やってちゅーしたくなったんやもん」 「したくなったからってしていいわけじゃ…」 「えー…口やないもん…」 「口じゃなきゃいいってわけでもない…」 真っ赤な顔で怒るまなは余計可愛くてもっとキスしたくなったけど次はホントに怒られそうやから我慢した でもそのかわりにまなの手を握る ポッケに突っ込まれてたまなの手は暖かかった まなも軽く身じろいだ程度で珍しく大きくは抵抗しなかった 「……なんだよ…」 「ん?手繋ぐんやったらええかな~?って」 「……人に見られるぞ…」 「見られんよ、誰もおらんし…それにオレは見られたってええし?」 「……駅近くなったら離せよ…」 「あら?まな今日やさしーやん?もしかしてまなも見られてもええって……」 「……手…離すぞ…」 「嘘やって」 まなはそう言って駅の辺りで人が多くなるまでは手を繋いどってくれた 今日の事が関係あるのかはわからんけど嬉しい もしかしたらまなはまだオカンの事を不安に思っとるのかも知らん 「まな…オレはまなのオカンや誰かがどう思おうがまなの事好きやで?」 「………こんなとこで言う事じゃない……」 「ははっ、そかもな?」 でもまなは心なしか嬉しそうにしとった そうしてその日はまなと別れた

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