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アオハル

「……!!……だ、だめだよ!!猛はオレのお嫁さんだからだめ!!」 「!?」 「!!」 「せ、先輩……!!」 「?」 皆かちーんと止って動かなくなって銀と健斗だけがだけが笑いをこらえてるような顔をしたり不思議そうにあたりを見回したりしてる しばらくすると猛がおろおろしだした 母さんは目を点にして固まったままだし父さんも動かない はぁ…っと口からため息が漏れた 何もまたこんなタイミングじゃなくても… 銀はもうほとんど笑いがこらえられなくなっていてげほげほと咳をするふりをしながらも笑っていた 「……?学?学まま?どうしたの?」 「…あ……え…っと…そうねぇ…」 「?」 健斗に呼ばれて母さんはやっと動き出した 頬に手を当ててまだ混乱した顔をしている 「えっと…ごめんなさい?ちょっと良く聞こえなかったわ?」 「えー!!だから、猛はおれのお嫁さんになるから学のお嫁さんにはならないよ?」 「……………あらぁ…」 健斗がもうっ!!っと怒るようなそぶりを見せながら再度言う 猛はもう耳まで真っ赤にして恥ずかしそうにしてた 「それに学にはぎ……」 「健斗!!」 「先輩!!」 「えっ!?」 さらに爆弾発言を重ねようとする健斗の口を猛が慌てて塞いだ 猛の手で口を覆われた健斗がんーっ!!っと不服そうな声を貰す 慌てて母さんの方を向くと母さんは驚いた顔をしていた き、聞こえたんだろうか… そして今はそれどころじゃないけど銀は机に突っ伏して小刻みに震えている きっと母さんと父さんがいなかったら大爆笑してるんだろう こいつ…絶対許さないからな… 銀を横目でにらみながら母さんの顔色を窺った でも俺や猛が不安がったようなことにはならなかった 母さんの顔が突然ぱぁっと明るくなる 「あらぁ、あらあら…そうなの、そうだったのねぇ~」 「……か、母さん?」 「あ、いいのよいいのよ隠さなくても、お母さん大歓迎だもの、そうなの…学もそんなことするようになったのねぇ~…」 「えっ!?い、いいの…?」 「当たり前じゃない!ねぇお父さん聞いた?学が女の子とお付き合いしてるんですって~、あ、あれね『アオハル』ね『アオハル』お母さん映画も見に行っちゃったわ~あの本間つばめちゃんがかわいいのよ~」 「え…」 母さんはきゃーっと嬉しそうに見に行った映画の話をし始めた もう話の論点がずれてきてるけど映画の話なんてどうでもよかった ……好きだけど…本間つばめちゃん… 母さんは盛大に勘違いしているらしい んーっ!!っと健斗は母さんの間違いを正そうと唸っている 「いや、母さん別に俺そう言うわけじゃ…」 「もうっ、いいのよう隠さなくても!明日はお赤飯にするわね!!それにね、そもそもねお父さんとお母さんが出会ったのも……」 「み、美登里…お友達の前でやめなさい…」 「あら~お父さん照れてるの?良いじゃない良いじゃない」 「か…母さん…」 結局『俺は女じゃなくて男と付き合ってるんです』なんて言えず、彼女なんていないって言っても信じてもらえなくて母さんの勘違いは余計深みにはまって行った 「今度うちに連れてらっしゃいね、学」 「………」 母さんは40代後半とは思えないぐらい顔を輝かせていた…

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