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あのね…
「ッ~~~~~~!!!!!」
恥ずかしくって、でも静かな部屋の中じゃさっきの銀の余裕そうな顔とか、昨日の行為とかが思い出されちゃってどうしようもなくて枕に顔をうずめてぅう~っと唸った
くっそ…あいつ……
「ッ~~~~~!!!」
声にならない声が漏れて枕に強く顔を押し付けた
「………学?…大丈夫?」
「あ…」
声を掛けられてハッとして顔を上げるとドアのところに心配そうな顔をした母さんが立っていた
き、聞かれた…!!
しかも母さんは俺の顔を見るとギョッとして寄ってきておでこや首に手を当てだした
「学顔真っ赤じゃない!へんねぇ…さっきまでなかったはずなのに熱もあるみたい…」
「あっ…っや…だ、だいじょ、ぶ…だから…その……ゆたんぽ、ちょっと熱かった…のかな…?」
「………そう?…でも、もし具合悪かったらちゃんと言うのよ…」
「う、うん……ごめん…」
ベットの縁に座ってちょっと心配そうに俺の頭を撫でる母さんになんだか申し訳なくなる
母さんはしばらく俺のくせっ毛を撫でていた
そして突然ふふっと笑う
「……?」
なんで笑われたのかわからなくて首をかしげると母さんは余計に笑ってそして口を開いた
「ごめんね、なんだか変な話だけどちょっと嬉しくて…」
「…?嬉しい?」
「ほら、昔学良く風邪ひいたりちょっとだけ病気しやすい子だったじゃない?でも体が大きくなるにつれてちょっとづつ丈夫になっていって…最近はそんな事もほとんどなかったしそれにもしなっても一人で何とかしていたんでしょう?だからなんだかこうやって看病するのがちょっと嬉しいな~なんて…」
「…………………」
母さんはニコニコしてまた俺の頭を撫でた
「……ふふっ、ごめんね、早く良くなるといいわね…」
「……………」
母さんはその後もしばらく俺のベットの縁に座っていろんな話をした
昔の話や父さんの赴任先での話、それに俺のこっちでの生活についても聞いてきた
その間母さんはずっと俺の頭に手を乗せてぽんぽんと優しく叩いたり撫でたりしていた
「……………」
そして母さんがたまたま向こうで見た本間つばめちゃんの出てる映画の話をしてた時
ふと銀の顔が頭に浮かんだ
またいろいろ思い出しちゃってボッと顔が熱くなったけど多分母さんには気づかれてないと思う
「………か、母さん…あのさ…」
「……?どうしたの学?」
「あの…さ…」
母さんが50歳目前とは思えないような無邪気さで首をかしげる
母さんは優しいからきっと銀と付き合ってるって言ったって否定したりなんかしない…
昔からそうだもの…
「え…っと……その、銀ね…銀、はね…」
「……?頬付くん?」
喉まで出かかってる言葉が出てこなかった
俺が付き合ってるのは銀だよ…
「あ、のね…」
「……?」
もう付き合い始めて一年半になるよ…
「その…」
男だけどね、本当に好きなんだ…嘘じゃないよ…
でもそれらの言葉は喉で止まって出てこなかった
「えっと……ま、また…今度話す、ね……」
「……そう…?」
母さんはなんだかちょっとだけ寂しそうな顔をした
また胸がきゅっとなった
「…じゃあ、お母さん下で晩御飯作ってくるわね、お父さん帰ってきたらまた来るから、具合よかったら一緒に食べましょ」
「……うん…」
そう言って母さんは部屋から出て行った
………また言えなかった…
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