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俺はね…
「へぇ…それで学大丈夫だったのか?」
「あ…うん…」
「変よねぇ…一瞬熱もあったみたいなんだけどもうケロッとしてるのよ」
「ふーん……まぁ若いんだしそんなもんなんだろう」
「そうかしらねぇ…でも良くなって良かったわ」
「……うん…し、心配かけてごめん…」
夕方になりこっちの職場で一緒だった人たちと会って来た父さんも帰ってきて3人で食事を取った
今日は献立はアジの南蛮漬けと筑前煮とごぼうの和風サラダだ
おいしい…
…………また……言えなかったな……
父さんが今日会って来た人たちの事を話してたけど耳に入らなかった
俯いてもそもそとご飯を食べる
おいしいはずのご飯もなんだか喉を通らなかった
「…?どうした学、まだ体調が悪いのか?」
「えっ、あ、ちがう、よ…」
「あらホント、元気ないわね~」
「そ、そんな事ないよ…」
そうは言ってみたけどその声には自分でもわかるくらい元気がなかった
………下手くそ…
こんな時に自分の演技力の無さを呪う
きっと銀ならへらっと笑って何事もなく切り抜けるんだろう
…そもそも銀ならこんなことで悩まないか……
「どうしたの学?何か最近変じゃない?」
「そ、そう、かな……?」
「そうよ~最近何か言いかけてやめたりするし…ぼーっと考え事してることも多いじゃない?」
「え…そ、そう、なの?」
「そうよ~」
「そうだな…」
「………」
思わず聞き返してしまう
そんな自覚もなかったしうまくごまかせていたつもりでいたけどそんな事なかったらしい…
恥ずかしくてカァッと顔が熱くなってしまう
「………」
「………」
「………」
シーンとしてしまってなんだか気まずい雰囲気になってしまった
「…ねぇ学……」
「…な、なに?」
すると母さんが急に真剣な声で俺に呼びかけた
口がからからして声が裏返る
「もしその…なんて言うのかしら?悩んでることとかがあるなら相談してくれてもいいのよ…?」
「え…」
「…その……もしかしたらこんなお父さんについて行って家を空けるようなお母さんには言いづらいのかもしれないけど……」
「え…え、え…?」
母さんは少しだけ悲しそうな顔をした
もしかして母さん俺が母さんと距離を取って言いたいこと言ってないと思ってるの…?
父さんに助けを求めて視線を送ると父さんは何か言いなさいと目線で促していた
「か、母さん…べつに俺そういうつもりじゃ…」
「あ、いいのよ…責任感じさせたかったわけじゃないのよ…その…そうかな…って…でもごめんなさい、これじゃどういっても責めてるように聞こえるわよね…?」
母さんはショボーンとして元気がなくなってしまった
おろおろしてしまう
ど、どうしよう…な、なにか言わないと…なにか…母さんに違うよって納得させられるなにか……
頭がグルグルして目の前もグルグルするような感覚になってしまう
えっと…えっと…
「お、おれっ!!銀と付き合ってるんだよ!!」
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