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『ギン』
ピンポーン…
「………」
………ピンポーン……
「………」
お腹を痛くしたまなをまなの家まで連れて帰った日の夜
もう9時過ぎてそろそろ風呂入って寝ようかなんて思ってた時に家のチャイムが鳴った
ピンポーン…
「………」
こんな時間にオレの家のチャイム鳴らすのなんてあのアホ兄貴か宗教の勧誘かどっちかや…
めんどくさくって無視しとったら帰ってくれへんかな~って思うてほっといたんやけどしつこくチャイムを鳴らし続けてくる
ピンポーン…
「……はぁ…」
しょうがなく重い腰をあげてインターホンの受話器を取った
「はーい…どちらさまですかー?」
「……………ぎん……」
「…?…あれ?まな?」
「……うん…」
でもオレの想像とは違って兄貴でも宗教勧誘でもなく受話器の向こうの声はまなやった
なんだか遠慮がちに返事をする
「どしたん?連絡もなしに…あ、とりあえず開けるから入って?」
「………うん……」
こんな時間に…
まなならスマホ持っとるし事前に電話かメールぐらいするはずや…それについさっき家に送ってったはずなんやけど…
でもドアののぞき穴から覗いてみても兄貴が『ドッキリ大成功』って書いた旗持ってヘラヘラしとるなんてことはなくてまながしょぼんっとした顔で立っとった
コートも着てなくて寒そうで鼻の頭が真っ赤やった
すぐにドアを開けてやる
「…どしたん?こんな時間に…」
「……うん…」
「……寒いやろ?とりあえず中入り?」
「………うん……」
まなはおずおずと部屋に入ってきた良く見るとスマホも財布も家の鍵ももっとらん
一瞬良くない想像が頭をよぎったがそれにしてはまなの傷つき具合が薄い
もちろんそういうことはしない相手だっただけかもしれんけど…
終始しょぼんとしたままのまなをリビングのソファに座らせてその隣に俺も座る
抱いたまなの肩は冷たかった
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