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一緒に行こ
あれから銀とココア(銀はコーヒーだったけど)を飲んで少しの間だけ銀と話してもう一度ちゃんと母さんたちと話そうってことになった
銀が『今度はオレも一緒に行くから』って言ってくれて心強かった
「…ほな、まないこか…」
「…………うん……」
「…だーいじょうぶやって、今回はオレも一緒に言ったるから…一緒に認めてくださいって言うよ……」
「……うん…」
「…ん……大丈夫やから…」
そう言って銀は笑いながら玄関で靴を履く俺の手をギュッと握ってくれた
でもそうは言われてもわっぱり気持ちが下向き気味になってしまう
もしまた何言ってるの?って…もっと考えなさいって言われたら?
もっと…もっと直接的に銀とは別れなさいって言われたら……男なのに男が好きなんておかしいって言われたら…
どうしてもそんな事を考えずにはいられなかった
………やっぱり……今日は帰りたくないな…
「…………」
「まな?」
靴はもうとっくに履けていて銀はなかなか立たない俺に不思議そうに首をかしげている
もう一回話さないといけないのはわかってる…わかってるけど…
グッと唇を噛んだ
こんな時になってまたいじけたひねくれた気持ちが戻って来てしまう
……行きたくない…
「………」
「………」
そうやってうつむいてじっとしていると急に銀とつないでいた手がグイッと上向きに引っ張りあげられて目の前に銀の顔があった
そのまま頬に手を添えられて耳の裏や首筋を撫でられる
そして額や頬や瞼にたくさんのキスを落とされた
思わずキュッと目を閉じて身を硬くしていた
「……っう…っな、なに……ぎ、ぎ…ん?」
「………」
「…っぎ、ぎん…?」
この後も銀はしばらく無言で俺にキスしつづけ最後に唇にも浅くキスをした
顔を離した銀がニコッと笑う
そして俺の額に自分の額を合わせてゆっくりと口を開いた
「まな………」
「………」
「変な顔…」
「…なっ…!!はぁ!?お…お前がいきなりへ…変なことしてくる…から…!!」
「……ふふっ」
「………な…なんだよ…」
「……そっちの方がまならしくてええよ」
「………」
そう言って銀は今度は俺を自分の胸の中に抱き込んだ
一度俺を強く抱きしめてから顔をのぞきこまれた
サラッと揺れる銀の髪が何だか色っぽくて顔があつかった
「……平気?行ける?」
「………うん……」
「ん……大丈夫やで…」
銀は俺の返事を聞いてドアを開けた
手は繋いだままにしてくれた
外はもう真っ暗で風がつめたかった
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