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ごめんなさい

家が見えてきた もう時間は12時近くになっていたけど家の灯りは点いたままだった 「………」 「………」 銀は何も言わない 静かで家が近づくにつれてドクドクと心臓が早く波打つ音がうるさかった 「………」 「………」 まだ不安で銀がいなかったら今すぐどこか行ってしまいそうでなかなか入る決心がつかない 銀の家からずっと遠慮がちに繋いでる手をきゅっと握りなおした 深呼吸する 大丈夫だ……頭も冷えたし、銀もいるんだ…きっとさっきより落ち着いてはなせる… でももしそれでもわかってもらえなかったら…? ……その時は…………もう一回話してわかってもらおう… ゆっくり一歩ずつ進んだ 家が見えてから家の前に着くまで多分一分にも満たないような時間だったんだろうけど俺にはすごく長く感じられた 「………」 「………」 家の前に着いても銀はやっぱり何も言わなくて俺が自分のタイミングで入るのを待ってくれた ………言うんだ…母さんたちに…ちゃんと… ドアに手をかける 鍵は開いてるらしかった ………は…入るぞ…… ごくっと唾を飲んで手に力を入れた 「………た……だ、いま…」 口からでた挨拶はなんだかぎこちなかった するとバタバタと家の中で音がしてリビングから母さんが飛び出してきた ビクッと体が硬くなる だ…だいじょうぶ…だいじょうぶ… 大きく深呼吸した 「あ…あの……母さ…」 「…学!!」 「…っわ!!」 決心してもごもごとだけど口を開いたら突然母さんの手に両方のほっぺたを挟まれた なんだかよくわからなくて目をぱちぱちする 母さんはしばらく俺の顔を眺め頭の上から足の方まで見てなんだかほっとしたような表情になった その時母さんが心配して待っていてくれたんだとわかった 母さんは安堵の息と一緒に口を開いた 「あぁ…良かったわ…」 「え…あ……心配かけてごめ…」 「ごめんなさい!!」 「…!?」 また母さんに先を越されてしまう 母さんは俺に頭を下げていた な…なんで…? 余計に意味が分からなくて目をぱちぱちさせた 「…その……さっきのね…嫌な言い方しちゃってごめんなさい……」 「あ…」 「嘘を言ったつもりはないのよ!!でも…その驚いちゃって…カッとなってつい…」 「………」 「……これじゃ言い訳してるみたいね…ごめんなさい…」 母さんはまた頭を下げようとした それを慌てて止める 「お…俺、も…!!」 「…?」 「……おれ、も…その……大きい声…だしたりして、ごめん…」 「………」 「そ…それ、でね……その……」 チラッと俺の後ろにいる銀に視線をやった 目が合って銀が大丈夫って言うみたいに俺の手を握ってくれた ……言うんだ…!! 大きくひとつ深呼吸した

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