727 / 1015

両親おまけ 紺庄家父

「ままー!!ぱぱー!!猛連れてきたよー!!」 先輩の声が響き渡った ごくっと唾を飲む しばらくするとぱたぱたぱたっと軽い足音がしておくから男の人が出てきた その男の人が玄関まで来て俺を見上げて口を開く 紺庄先輩が『ぱぱ!!』っと声をあげた 「わぁ…君が猛くんですか?いらっしゃい、大きいですね?」 「…あ……よ、吉田猛です!!……そ、その…紺庄先輩とお付き合い…させ、て、いただいて…ます…」 「うんうん、健斗くんに聞きました健斗くんのパパの智也です…あ、どうぞ上がってください、今スリッパ出しますね、花柄とチェック柄どっちがいいですか?」 「ち、チェック柄で…あ…あの…あ、りがとうございます…?…」 智也さんはニッコリ笑ってスリッパを出してくれた な…なんだか調子が狂う… この男の人は紺庄先輩のお父さんの智也さんと言うらしかった 今年でもう42歳らしい でも全然そんな風に見えない… 智也さんは小柄で華奢で、そんな体に似合わない大きな黒縁のメガネを掛けた人だった ふにゃぁっと目じりが下がってそのかわりに口角が上がって見るからに優しそう… 智也さんの周りに花が飛んでるエフェクトが見えそうなほどだ 袖の長い指先しか見えないような紺色のカーディガンを着てその上に園芸用?っと思われる土汚れのついたエプロンを着てずーっとニコニコ笑ってる 釣られてこっちもぎこちなくだが笑顔を返すことができた 智也さんが出してくれたチェック柄のスリッパをはく 智也さんは隣に立ったオレをじーっと見つめてた 「いやぁ…お話は聞いてたんですが、本当に大きいですねぇ…」 「…あ、ありがとうございます…」 「僕よりずっと大きいです」 智也さんがつま先立ちをしてぴょこぴょこと飛び跳ねるようなそぶりを見せる…正直先輩に似ててちょっとかわいらしかった… 「ピアスもしてるんですよね?カッコいいですねぇ……あ、あの…もしよかったら見せてもらえませんか…?」 「え、あ…どうぞ…今は、その…ピアスしてないんですが…」 「ふふっ、ありがとうございます、カッコいいですよねぇ…僕も昔そう言う映画見て憧れたりしたんですけど痛いの怖くて…」 ちょっとかがんで耳を傾けると智也さんは男にしては小さな手を伸ばして耳に触れた 先輩と同じ柔らかくてあったかい手だった そして耳に開いた穴を見て『わぁ…』とか『格好いいですねぇ…』とニコニコして感想を述べている なんだか変な気分… ………せ、先輩のお父さんだ… 改めてそう思った 「あ、そう言えば、沙耶ちゃんにも会いにきたんですよね?」 「さ…さや、ちゃん…?」 「あ、沙耶ちゃんは僕のお嫁さんです」 へへへっと智也さんは顔を赤くして照れくさそうに頭を掻きながらそう言った どうやら紺庄先輩のお母さんの事らしい そうだ、オレはまだお母さんにも挨拶をしないといけないのだ… でもさっきよりも緊張が和らいでいた 智也さんのおかげだ お父さんがこんな人なんだ、もしかしたらお母さんだって… でもその期待は数分後に裏切られることとなった…

ともだちにシェアしよう!