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両親おまけ 未知

「懐かしいなぁ~」 「って言ってもまだ一年も経ってないですけどね」 「そうだっけ?」 先輩がえへへーっと笑いながら首をかしげる でも先輩が懐かしいって言うみたいに結構前の事のように感じられた 今では父さんと母さんは運よく紺庄先輩に会えば何かと世話を焼こうとしたり晩御飯を作ってくれたりと良くしてくれるし、オレだって先輩の家に行けば沙耶さんに肩を組まれビールとたばこを進められるくらいには打ち解けることができた…その都度沙耶さんは智也さんに煙草を没収されているけれど… とにかくお互いにお互いの家族に報告してきちんと認めてもらうことができた でもきっとそれはちょっと特殊な事で紺庄先輩の家なんてその最たる例だったんだ… だから学さんは苦労したんだろうなぁ… さっき別れる時に頬付先輩の服の裾をきゅっと握って照れたような困ったようなそしてちょっと嬉しそうな顔をした学さんとそんな学さんを見て穏やかそうに笑う学さんのお母さんを見てそう思った 「でもさ…学もままとぱぱにわかってもらえてよかったよね!!」 「……そうッスね」 にーと笑う先輩が愛らしくて頭を撫でると先輩がすりっと顔を手にすり寄せてきて可愛かった 先輩はそれに満足するとちょっと真面目な顔で口を開いた 「学のままとぱぱもね、いい人なんだよ…きっと学の事心配してすぐに良いよって言ってあげれなくてね…あとね、えっと……学、その…ちょっとままやぱぱの言うことにすぐ『うん』って言えないとこがあるからね…それでね…」 「………」 先輩は一生懸命学さんたちの家であったいざこざについて説明しようとしてた 思いのほか失礼だが先輩らしからぬ的を射た発言にへぇ~と感心してしまった 先輩いつもいい意味でも悪い意味でも楽観的だから今回の事も特になんとも思ってないのかと思ってたんだけどちゃんとわかってるんだな… やっぱり幼馴染だからなのか… なんだかそう思うとちょっと妬けてしまった きっと学さんも紺庄先輩が学さんの事をこうやって良くわかってるのと同じぐらい紺庄先輩の事を良くわかってるんだろう… ……………………… 「………」 「…?猛?」 少し表情を曇らせたオレに違和感を感じたのか先輩が首をかしげた 先輩の事となるとオレにも独占欲というものがあるんだと思い知らされるな… 『なんでもないですよ』っと先輩に言うと先輩はまだちょっと不思議そうな顔をしたままそっか?って言ってそれ以上言及してこなかった でもこの後の先輩の発言が新たな謎を残していくことになった 「そう言えばさ、銀のままとぱぱはどんな人なんだろうね?」 「……え…」 「銀のままとぱぱだよ、おれ銀の家何回か言ったことあるけどお兄ちゃんにしかあったことないよ?学も知らないんだって」 「………」 確かにそうだ… そんなわけないのだが今まで何となく頬付先輩は、頬付家の父と母がいて頬付先輩の兄ができ頬付先輩ができたって言うよりなんだか自生して生まれた植物のような人だという感覚があった 先輩の人並み外れた容姿や人を寄せ付けない雰囲気がそうしてたんだと思う… でも先輩にだってもちろん父がいて母がいるはずだ なのにそれを月数回家に行くオレや紺庄先輩だけでなく、ほぼ毎週頬付先輩の家に行く学さんすらそうなんだと知るとなんだか違和感だった …………頬付先輩の両親…… これもまた想像してもオレの想像力程度じゃ全くとらえることのできない未知の存在だった 【家族編 おわり】

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