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あのわんこ

次の日いつも通り学校に来た 朝母さんの部屋を覗いてみたらまだ寝てて昨日も夜遅くまで仕事があったみたいだから起こさずにそっと出てきた 金さんはいつも通りで多分今日も外でフラフラして夜になったら戻って来るんだと思う 「……ふぅ…」 息を一つ吐いて校門をくぐった こうしてなんでもない授業を受けて、いつも通り銀くんと学に愛の言葉を投げかけて、女の子たちにちやほやされる そして昼休みになるとなぜか足が自然と屋上へ向いた 手にはさっき女の子から貰ったお弁当がある 『ねぇhoney?…私と一緒にイギリスで生活しない?』 昨日の母さんの言葉が思い出された 屋上の扉のドアノブに手をかけたままピタッと動きが止ってしまう mamaと…イギリスに… まだ鮮明に思い出せるほんの少し前のイギリスを思い出してみた 良い所だと思う オシャレだし、もっと都会的だし… そんな場所でmamaと同じモデルができると思うと心躍るものがあった 別にやりたくないわけじゃないんだ…楽しいんだろうし…きっとmamaも俺が一緒だと安心だよね…? なのに… なんだか胸の奥がモヤモヤした 「あっ!!ノア先輩ッス!!」 「!!」 「先輩も屋上でご飯食べるんスか?」 「………」 「?なんで何も言わないんスか?」 「…あ…」 若葉ちゃんはへんなのーって笑って俺の腕を引っ張った そのまま屋上の扉をあけて外へ出る もうさすがに外はちょっと寒くて若葉ちゃんはぷるぷるっと身震いしてた 「きっとご飯食べたら先輩も元気になるッス!!」 「……若葉ちゃんじゃないんだから…」 「あ、ほら!!もうちょっと元気ッス!!」 若葉ちゃんはぺかぺか笑って俺をいつもの小屋の上まで誘った 俺の隣に当たり前のように腰を下ろして、持っている袋からパンを取り出した にこにこ嬉しそうに笑って口の周りに粉砂糖をいっぱいつけながらもぐもぐ頬張っている そんな若葉ちゃんをみてたらなんだかおかしくなってフッと笑ってしまった 「…?なんれひゅか?しぇんぱい」 「…口に入れたまま喋んないでよ…ほら、口にsugarがいっぱいついてる…」 「!!あいがとうごじゃいまふ!!」 「だから、口に物入れたまま喋らない…」 えへへーすいませんっとわかってるのかわかってないのかよくわからないような返事を返して若葉ちゃんは食事を続けた はぁっと溜息をついてからオレも弁当を開いてお昼ご飯を食べ始める そしてふと思った ……若葉ちゃんは俺がいなくなったらどう思うんだろう…

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