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心配事

さっき金さんが言ったセリフが頭から離れない 『ハーフくんのお母さんがこのあいだ帰って来てね、ハーフくん、イギリスに帰ってモデルやるんだって』 『…は……』 『……へ…』 『あっ、言っちゃった♥』 志波が…?モデル…? 眠たくって重たい頭を一生懸命に回転させるけどその言葉にそれ以上の意味もそれ以下の意味も見いだせない 気になってホントはもっと金さんに問い詰めて話を聞きたかったけど銀も早々に諦めちゃうし金さんも眠いって寝ちゃうしで聞くことはできなかった 銀が俺の手を引いてベットに座る 銀に答えを求める視線を向けても当たり前だけど答えは返って来なかった 「ね、ねぇ…銀…さっきの、かなさんの…」 「………」 「ほ、んと…なのかな……」 「………」 「ねぇ…ぎん…?」 「………」 銀はじーっと黙って考えてるみたいだった 金さんの言う事だから嘘ってことだってある… でも今回の金さんは嘘をついてる感じはなかった 志波とはいろいろあったけど……嫌な事だってたくさんされたけど…それでも今はちゃんと友達だと思ってる… それに卒業までのあと少しのだけど一緒だと思ってた相手が急にいなくなるなんて考えられなくてなんだか実感もわかなかった それに……若葉ちゃんは…? 志波と『お友達』になったと大喜びしてた若葉ちゃんの顔が浮かんだ いつもは人の事なんてあんまり考えてなさそうな銀も顔をゆがめていた 同じことを考えてたのかもしれない 「………」 「………」 「………」 銀も俺もお互いに黙り込む 俺らは別に志波が決めたことなんだったら少しぐらい残念だとか思っても(銀はどう思うのか知らないけど)他人の進路や将来に口を出したりはしない でも若葉ちゃんは… なんだかこのことを聞いた時の若葉ちゃんの気持ちを考えると胸が痛かった 「………」 「………」 「………」 長い沈黙が続く それでもあれやこれやと色々考えているうちに俺の体はだんだん疲れに耐えきれなくなってきてうとうとし始めてしまった 銀の肩にこつんこつんと頭があたる そんな俺を銀はそっとベットに寝かせてくれた 「ほらまな、もう今日は寝よ…」 「…ん……」 「……まだ本人に聞いたわけやないんやし大丈夫やって」 「………ん…」 「ん、おやすみ、まな…」 「……おや…すみ…」 まだ気になることはたくさんあったけど頭を撫でてくれる銀の手が心地よくてその日はそのまま意識を手放した

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