部屋で一人で荷物を片づける 「………」 白いカーテンが風にはたはた揺れているだけですごく静かだった あれから金さんは『楽しかったよん♪　p.s.またお酒一本もらうね♥』ってメモを残してどこかへ行ってしまったし、mamaもこっちでの仕事が一度終わってイギリスへ戻った あれから若葉ちゃんと何度か出かけたり学と銀くんが俺を『愛』して送別会って言うのをしてくれたりしてバタバタしてたけど今日は何の予定もない… mamaは俺がイギリスに行くって言ったらすごく喜んでくれたな… その日すぐに事務所の人に連絡して、事務所の人もすごく歓迎してくれて… papaにもそのことを連絡したら『ノアには日本で大学に行って僕みたいに医者になったりするよりもシェリーみたいに早いうちからイギリスでモデルをやる方が似合ってるかもね』って言ってくれた ちなみに『シェリー』って言うのはmamaの事だ 『Charlotte』だから『Cherie』 mamaの友達や仕事の人もそう呼んでた 「………」 ふぅっと一息ついて立ち上がる なかなか片付けが進まなかった この家にはまだ仕事に余裕ができた時にpapaが住むし、俺やmamaが帰ってきた時も使うからそんなにきっちり片づけなくていいけれど最低限の物は向こうに持っていかないといけない そう思ってこっちに来るときに持って来たsuitcaseとダンボールを引っ張り出して服やいろいろをつめていた こっちできてた制服はこっちに置いていくもの…服も何枚かだけ持ってって…写真は…dataにして持っていけばいいか… こんな風に整理しているとaccessory caseの中に小さな箱に入った少し変わった形のピアスのセットを見つけた 「……これ…」 それは学のために買ってあげたけど結局銀くんが俺に(仕返しで)付けてくれたものだった そっか…このあいだ若葉ちゃんとsexした時に外したんだっけ？ 買った時よりも少しくすんで鈍い光を放つ金色のピアスを撫でながら回想に浸る そう言えば学のおちんちんの毛なんかも取ってたっけ…？ そう思って少し探すと学の『いろいろ』や銀くんの『いろいろ』が出てきた 懐かしいなぁ… そうやって整理していくといろんなものが出てきた これは銀くんと学の『ご褒美』を掛けて勝負した時のテスト…こっちは金さんと初めて会ったときに貰った金さんの連絡先…みんなで別荘に行ったときに着てた水着にお祭りに着てった浴衣… そして… またaccessoryが入った箱の中からころんっと丸い安っぽい水色の玉が出てきた お祭りに行ったときに若葉ちゃんがくれたラムネのビー玉… なんだか胸がつかえるような気持ちになった こんな気持ちに今までなった事なんてない… 「はぁ…変なの…」 頭を振ってへんな気持ちを振り払い新しいダンボールを持って来ようと思ったら膝に置いていた手の甲に何かが落ちた そっちに視線を向けると手の甲が濡れていた 「……？」 今度は見る見るうちに視界が滲んでく ………泣いてる…の…？ 一度ソレに気付くとぽたぽたと目から溢れる水は止まらなかった ………悲しいの…？寂しいの…？ 自分にそう問いかけてみたけどその答えはわからなかった ただ少し胸が痛かった