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Salty lip

若葉ちゃんにピアスをあげてそれから少し話をした 俺のプライベートな連絡先も教えてあげたし、無料の電話アプリをインストールさせて電話もできるようにしてあげた 若葉ちゃんは俺がアプリの使い方を教えてあげたり海外に手紙を送る時の送り方を教えている間きょとんっとしてたけどでも何とか覚えたみたいだった 「おれ、いっぱい先輩にメールおくるッス!!お電話もいっぱいするッス!!」 「…ちゃんとそのアプリ使うんだよ?普通にかけたらすごくお金かかるんだから」 「うす!!」 若葉ちゃんはにかっと笑った もう大丈夫そうだね… 安心してするりと若葉ちゃんのほっぺたを撫でた 「………honey…」 「……!!」 mamaが後ろから俺に遠慮がちに声を掛けた 助手席の窓を開けて俺と若葉ちゃんに申し訳なさそうな視線を向けてる さすがの若葉ちゃんでもmamaの事を知ってるのかいつも真ん丸な目をさらに真ん丸に広げてmamaを見ていた 「……わかってるよmama、時間だよね?待たせちゃってごめんね…」 ちょうどその時学校のチャイムもなった しばらくしたら校庭に生徒が出てきて囲まれてしまう その前に行ってしまわないといけなかった 「……若葉ちゃん…」 若葉ちゃんの方に向き直ると若葉ちゃんは俺の新しい連絡先が入ったスマホを胸の前でキュッと握ってこっちをまっすぐ見つめてた 目がうるうるしてる また泣いちゃうのかな… 「…若葉ちゃん……」 「ノアせんぱいっ!!」 「!!」 若葉ちゃんに手を伸ばそうとしたら若葉ちゃんが駆け寄ってきて俺の胸にボスンっと飛び込んできた ぎゅーっと俺の胸に顔を押し付けるようにしていつもの癖でくんくんと匂いを嗅いでいる 少しすると若葉ちゃんは俺からそっと離れた そして突然、若葉ちゃんはにーっと良い顔を作って笑った 目の端が光っているように見えた 「おれ、良い子にしてるッス!!」 「………」 「勉強もするし、知らない人にもついてかないし、野菜も食べておっきくなるッス!!……だから…」 「………」 若葉ちゃんがごしごしと目元をぬぐった あとからあとから湧き上がってくる涙は止まらないみたいだったけど笑うのをやめはしなかった 若葉ちゃんの笑顔をキラキラした涙がたくさん伝い落ちて行く 「だから…だ、から……ちゃんと、む、かえに、来てほしい…ッス!!」 「………」 若葉ちゃんは笑顔でそう言いきった グラウンドに若葉ちゃんの涙が落ちて土の色が濃くなる 後ろからmamaが再度申し訳なさそうに『honey…』って呼んだ 時間だ… 「若葉ちゃん」 再度若葉ちゃんを自分の胸に抱き締めた 若葉ちゃんはまだ泣きながら笑ってた えへへ…って笑ってノア先輩の匂いがするッスなんて言うんだ… 学校の玄関の方から生徒の声がしてくる もう行かないと… あの日みたいに胸がズキズキと痛んだ あともう少し…ほんの少しだけでもこうしてたかった でも先に体を離したのは若葉ちゃんだった 俺から体を離して数歩後ろに下がる ボロボロ泣きながらニコニコ笑って手を振っていた 「See you laterッス!!ノア先輩!!」 「…ハハッ…満点の発音だよ若葉ちゃん…」 最後にもう一度だけ若葉ちゃんのしょっぱい唇にキスして俺は車に乗り込んだ 「またね、若葉ちゃん…」

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