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良い子

ノア先輩がイギリスに行っちゃった日 おれはたくさん泣いてあまりにも涙が止まらなくて結局早退した 猛さんと健斗さんがわざわざ家まで連れてってくれておかんにもビックリされた そのままその日は悲しくてたくさん泣いてそのまま泣き疲れて眠ってしまって起きたら次の日の朝になっていた もう涙は出なかったけどなんだか頭もぼんやりして元気も出なくてノア先輩と良い子にしてるって約束したのにその翌日から学校をズル休みしてしまった 「………」 ぼーっと部屋の布団の上で座ったまま天井を見つめてた ノア先輩…もうイギリスについちゃったッスかね…… そうやって朝からぼんやりとノア先輩の事を考えている おかんはおれの様子がいつもと違うことを心配して何度か声を掛けに来てくれたりいつもはたくさん食べたらダメって言う甘いお菓子やジュースを持ってきてくれたりした ノア先輩、モデルになるって言ってたッス… ノア先輩のママがモデルのお仕事をしててそこで自分もモデルをやらないかって言われたって… いつもコンビニで立ち読みするマンガの隣に置いてあるオシャレな感じの可愛い女の人やカッコいい男の人がうつった雑誌を思い出してみた おれは買ったり読んだりしたことないけどあの表紙に写ってる華々しい雰囲気はノア先輩のそれと合ってる気がした 先輩…かっこいいッスもんね… 「………」 ごろんとそのまま布団に横になる ノア先輩がくれたピアスにはまだ違和感があってそこに触れてみたりした すると枕元にあったスマホが鳴って画面にはメールのマークと『ノア先輩』の文字が浮かんでた 「!!」 がばっと飛び起きて急いでそのメールを開く 慌てすぎて何度かスマホのロック解除を失敗してしまった ノア先輩からッス…!! メールには… 『こっちについてやっと落ち着いたよ、若葉ちゃんちゃんと良い子にしてる?』 とだけ書かれてた ……… 良い子って言葉にちょっと胸が痛くなった 良い子にしてないッス…もう学校ズル休みしちゃったッス… これじゃ…ノア先輩迎えに来てくれないッス… しゅんっとまた気分がふさぎ込むとまたスマホが鳴ってメールが届いた またノア先輩からだった 反射的にそっちも開く 『俺がいないくらいでへこんだりしないでよ、へこんだ若葉ちゃんすっごいブサイクなんだから』 じゃあ今のおれはブサイク中のブサイクッス… 不貞腐れた気持ちでメールを読む するとメールがスクロールできてまだ下に何か書いてあった 『大丈夫だよ、若葉ちゃんならいい子にできるよ』 ………… なんだか胸のとこがじわってなった 時計を見るとお昼の2時すぎたとこだった まだ良い子できるッス… 立ち上がって急いで昨日脱いだままのしわくちゃな制服に着替えた 良い子にするッス!! 「いってきます!!」 「え?若葉!?」 急いで家を出て駅まで走る 後ろからオカンの声が聞こえたけどそのまま走った 急いで電車に乗ってメールを開く 電車の中だったけど気にせずにーっと笑って写真を撮った それを添付したメールを作る 『良い子にしてるッス!!』 まだ少し悲しかったし寂しかったけどだからって悪い子にしてたらノア先輩に迎えに来てもらえないッス メールの送信ボタンを押した まだ悲しいし寂しいから早くノア先輩に迎えに来てもらうんス!! 学校まで走ったら最後の授業にだけ間に合ってぜーぜーいうおれに先生もクラスメイトもビックリした顔をしてたけどでもなんとかお休みにならずに済んだ 今日はぎりぎりだけど良い子ッス!!

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