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先輩が喜んでくれるなら
「学!!お化け屋敷あるってよ!!」
「えっ…!?………別に…俺お化け屋敷好きってわけじゃ…」
「?昔学パパと入って怖くておもらししちゃったときからずっと苦手だよね?」
「お、おも、らし…とかいうなよ…」
「?だっておもらしでしょ?」
「………」
目の前で先輩と学さんが今週末行く予定の遊園地について書いてある雑誌を広げ覗き込んでいる
先輩も学さんも楽しみにしてくれているみたいだった
オレ達が行く遊園地は確か今年の初め辺りにオープンした新しいもので半年と少し経った今でも週末はカップルや家族連れでにぎわっていた
正直…チケット貰ったりしない限り行こうとは思わないから良かったな…
先輩のはしゃぎっぷりを見てそう思った
あまりオレと先輩はデートらしいデートをしたことがないから…
………学さんも…あとおまけに頬付先輩も喜んで?くれたみたいだし…
ちらっと自分の隣に座る頬付先輩に視線をやるといつも通りの胡散臭い笑顔を浮かべて学さんと紺庄先輩を眺めてた
…………まぁ…前の温泉の時のお返しと思えば…
そう自分を納得させていると頬付先輩と目が合ってしまった
「なに?」
「……なんでもないです…」
「もしかしてまたムッツリの浮気願望が…」
「死んでください…」
はぁっと溜息が漏れた
この人も相変わらずだな…
「お前そんなんやとそのうちハゲるで?」
「そうなったらそれはきっと頬付先輩のせいだし、余計なお世話です…」
頬付先輩は楽しそうにからから笑ってた
何が面白いのか全く分からないけど…
頬付先輩は話を続けた
楽しそうにしてる学さんを見つめて少しだけ柔らかく笑っているように見えた
「遊園地、楽しみやなぁ~」
「…………そうですね…」
オレもニコニコして学さんと真剣に話込む紺庄先輩を見てそう思った
「あ、せや、オレな?ええもん買うねん、遊園地のチケットくれたし猛にもおすそ分けしたるわ」
「?」
「まだ買っとらんし…当日やな、当日やるわ」
「……どうも…」
頬付先輩がおれに?
………………………悪い予感しかしない……
「猛、何色が好き?」
「色…ッスか…?」
「そそ、その色のやるわ」
「………特に好きってわけでもないッスけど…黒…とか…?」
「わかった」
そう言って満足そうにニコニコ笑う頬付先輩は悪そうな顔をしてた
いつもの事だけど…
でもまぁここでいらないと言おうが頬付先輩は押し付けてくるだろうし何くれるんですかって聞いてもナイショって言われるだけだしこの会話はここで切り上げておくことにした
変な物だったら後日着払いで家に送りつけよう…
そんな事を考えていたら紺庄先輩と目が合って先輩がにこっと笑ってこっちに手を振った
オレも笑って振りかえす
……先輩が喜んでくれるなら…よかったな…
さっきまでの頬付先輩に対する憂鬱も忘れてそう思った
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