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コールスロー

「………」 「たけ兄ごはんまだぁ~」 「兄貴お腹すいたぁ~」 「………」 後ろで洋太と美香が声をそろえてそんな事を言ってた でも今はそれどころではなくて聞き流す もちろん晩御飯を作る速度もいつもの二割減ぐらいだ 「た~け~に~ぃ~」 「あ~に~きぃ~」 ………デート…紺庄先輩と…遊園地で…デート… もんもんとそんな事を考える 週末が近づくにつれてもうずっとそのことばかり考えている 前の時…つまり頬付先輩たちと旅館行ったときは、その…そ、そういうののこと?で頭いっぱいだったし?それに頬付先輩たちだっていたから… そう思ってみれば今回がきっちりちゃんとデートするのは初めてな気がした いつも学校帰りに一緒に帰ったりはするけど寄り道とかしないし…休みだってオレがいつもバイトあるから一緒に遊んだりした記憶もない 「………」 作業の手を止めて考え込む オシャレ…とか…した方がいいのかな… そうは思ってみたもののオレはオシャレができるほどの洋服を持っていなかった なんで今まで気づかなかったんだ… 今日は金曜で明日は日曜に休みを貰った分朝から長めにバイトがある 洋服を買いに行けるような時間は無い… 「………」 一瞬頬付先輩の顔が頭に浮かんだけどあの人が人に貸せるほど服を持っているとも思えないしそもそも頼りたくない……服借りても手足の袖余りそうだし… そんな時もう一人ある人の顔が浮かんだ あの人なら…!! 良い考えが思いついたことでやっと安心して考え事をやめることができた 早く晩御飯を作り終えてしまわないといけない そう思って手元を見てギョッとした ちょうど同時にオレの晩御飯の準備の様子を見に来た姉貴も一緒にギョッとしている オレの手元にはフードプロセッサー(使ったことないけど…)に長時間かけ続けたんじゃないかってぐらい細切れにされたキャベツがあった サラダ用に千切りにするつもりだったのに… 「アンタ…何やってんの…?」 「………コールスローにする…」 結局姉貴や後ろでお腹が減ったと騒ぐ洋太と美香に申し訳なく思いながら少し手間を掛けてコールスローを作ることになった…

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