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念願のお似合い
きゅうっとクラスメイトと雑談をする銀の服を握ったまま立っていた
「………」
さっき銀にこいつらの前でその…き…キスされた…
まなって呼ばれたし…顔も見られたし…キスまでされた…
でもこいつらはオレに気づかなかった
そっと唇に触れてみる
今までキスしてるのを誰かに見られたのなんて猛か、健斗か、志波か…あと金さんと翔さんぐらいのもんだった…
皆『俺』と銀が付き合ってるのを知ってる人たちだしそう言う…その…男同士で付き合うことに理解のある人たちだ…
温泉行ったときも逆ナンパしてきた女の人たちに見られた…って言うか見せたけどあれはその…俺から…だったし他の人には見られてなかったし…
それにその人たちに見られたのだってほとんど誰かの家とか目だたない物陰とかでの話でこんな公共の場でじゃない
だからこんな公のたくさんの人がいる場で…しかも俺と銀が付き合ってることを知らない人の前でキスされたのなんて初めてだった
まだドキドキしている…
「そんで…」
「へぇ…」
銀はまだそいつらと話している
男子三人組も俺の事を気に留めてる様子はなかった
ホントに…俺が男だとも思ってないのか……?
ごくっと唾を飲む
勇気を出して銀の体の影から少しだけ顔をのぞかせてみた
三人組のうちの一人と目が合う
どきっとしたけど銀の後ろに隠れずにそのままそいつの顔を見つめ返した
「お?なに?どうしたのまな…みちゃん?俺らとおしゃべりしたくなった?」
「おぉ、ほんとだ、おいでおいでお話ししよう?」
「………」
銀の顔を見上げると銀はお見通しだったみたいで『ほら、気にすることないやろ?』って言うみたいににんまり笑ってた
ぽんっと背中を押される
それでまた少し勇気が出てもう少しだけ身を乗り出した
じーっと三人の視線が集まるのを感じた
「………」
「………」
「………」
だ、大丈夫…さっきばれなかったんだし…
銀の後ろに隠れたくなる気持ちを抑えてじっとそこに立ってた
沈黙が辛い………
「おぉ…やっぱり頬付の彼女なんだな…かわいいじゃん?」
「スタイルも良いしな、お前より背高いんじゃね?」
「お似合いだな?」
そいつらが口々に感想を述べる
かわいいとかは良くわかんないけど何よりお世辞だったとしても銀とお似合いって言ってもらえたことが嬉しかった
頭を下げて笑顔を返す
「………」
そんなとき俺の脇でスマホを開いてた銀大きな声をだした
「あっ!!まなゴメン忘れとった!!ほら、まな見たいって言うとったショーもうすぐ始まるで?人多くなる前にいかんと…」
悪いなっと銀が三人組に軽く謝った
銀につられて時間を確認した三人組も少し慌てはじめる
「あっ!!俺らもとってたアトラクションのチケット時間じゃん!!行こうぜ!!」
「ほら、はやくはやく!!」
いっきにあわただしくなった
「ほら!!行くぞ!!」
「ま、待てよ!!じゃあな頬付、あとまなみちゃんも!!」
「ばいばーい!!」
「ほらまな、オレらもいこ?」
みんなばたばたと荷物を持って挨拶も早々に各々の手を取って走り出した
俺も手を掴まれてぐいっと引っ張られた
あ…あれ…?
何かおかしいと思ったときにはもうピンク色の頭は人ごみの向こうに消えてしまってた
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