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カナコ
まなを連れだした理由は単純やった
別にショーなんて次の時間帯に見てもええし正直どうでもよかった
あいつらの前にかわいらしく女装したまなを出して自慢したい気持ちと、なんだかどうどうとまなと恋人やっとるとこを誰かしっとる奴に見せたい気持ちと、とまなにそんなにびくつかなくてええんやでってわかってもらいたくてあいつらの前に出してみた
あいつらは『まな』が『学』だとは気付かないやろうとおもっとったしそれに怪しまれてもしらばっくれればええんや
そう思った
でもまながちょっと慣れてあいつらの前にでていつもオレにするみたいに無意識にちょっと照れたようにえへ…って笑顔を浮かべてそれを見たあいつらが頬を微妙に赤く染めたのを見てなんだかもやっとしたものが胸に湧いた
まなはオレのや…
まなをあいつらの前に出したのは俺なのになんだかそんな気持ちが胸にあふれて堪らなくなってしまった
「はぁ…」
「………」
しばらく走ったところで息をついた
人ごみに紛れてもうあいつらの姿は見えない
安心してまなに声を掛けた
「あ、まな、足大丈夫?痛くない?」
このままええ感じのムードに持ってってホテルに入って女装のまま…なんてのんきなことを考えていた…
「あーん♥銀くんが引っ張るからカナコ足痛くなっちゃった♥銀くんにお姫様抱っこで運んでほしいな♥」
「………」
「ぎんくーん?」
そこには派手な金色のウェーブがかった髪に、濃い化粧、露出が多めの服を着て、くねくねと体をねじらせてしなを作る女がおった
見覚えのあるイライラする顔やった
わなわなと体が震える
「なにやってん兄貴!!」
「乱暴はいやん♥」
っきゃんっとわざとらしく悲鳴を上げる女…
それはオレの兄貴やった
あわてて辺りを見渡してみるけどまなはどこにも見当たらない
くそっ、なんでこいつはいつもこうやって…
でも今はそんな事よりもまなが先や
「まなは!?」
「えー学くん?知らないよーさっき『たまたま』銀を見つけたから銀の手握ったらあんな風に攫われてさ…カナコもうお嫁にいけな…」
「ま・な・は!?」
「やーん♥」
兄貴はオカマみたいな不自然な口調のままやった
「知らないってば~でも可愛い女の子ならさっき銀が話してた子たちに手引っ張られて行くの見たかも…ハッ!!あれが学くんだったの?うそー!!しんじられないー!!」
「兄貴それわざとやっとるやろ!!」
腕に絡みつく兄貴を引きはがしてその場を去ろうとした
「あーん、銀待ってよ~カナコ足痛めてて歩けな…」
「歩かんくてええねん!!もうずっとそこにいろ!!」
「ひどいっ!!」
ひどいよぉ~っと平気で立ち上がってなおも大げさすぎる女走りでくっついてくる兄貴を適当にかわしながらさっきまなと別れたあたりまで急いだ
まなは嘘が下手やしオレがいない状態でまなが自分は男やって言うことを隠し通せるとは思わなかった
それに何よりあのまなに笑いかけられて頬を染めていたあいつらの中に一人だけ女装したまながおることが不安やった
何もないとええけど…
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