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恐怖のトイレ

「はぁ…はぁ…」 なんとか逃げ切れたか… 後ろを振り向いてみたけどあいつらが追いかけてきてるようには見えなかった 銀に連絡して落ち合わないと… 鞄の中を探ってスマホを取り出す 銀からのメールの返信は来てなかった もう一回メールしてみようかな… 「………」 そんな事を考えてたらぶるっと背筋が震えて下半身に違和感があった 下腹の辺りに手を当てる ……そう言えば…ちょっとトイレ行きたいかも… 視線を上げると目の前の建物に『WC』と書いてある 走って逃げた先にちょうどトイレがあって都合がよかった ………銀に連絡するのは用足してからでいいか… そう思ってスマホを鞄にしまいトイレの前に立った そこでひとつ問題があることに気付いた 自分の格好を見下ろす 「………」 ………俺はどっち入ったらいいんだ…? うろうろと女子トイレの入り口と男子トイレの入り口の前を行ったり来たりする 俺は…男だし… 男子トイレの入り口に立つ いや…でも男子トイレで用足すってことはつまり立って用足すわけで…もし人がいたり途中で人が入ってきたら…女の格好でスカートたくし上げている俺は… ってことはやっぱり見た目も一応女なわけだし…ここは… 今度はすすすっと女子トイレの方に寄る いや…でもでも…女子トイレってことは中に女子がいることもあるわけだし…男子にいろいろ見られたくないから男女別れてるんであって…いくら個室で俺が周りから女に見えるからって実際男の俺が女子トイレに入るのは… ……………… そうこう悩んでるとまたぶるりっと背筋が震えて尿意が襲ってきた と…とりあえず今日は多目的トイレに… 少し罪悪感を感じつつ周りに人がいないことを確認して多目的トイレに入ってとりあえず用を足した スッキリした… 手を洗ってホッと一息つく でも一息つけたのはほんとに一瞬だった ガラッと音を立ててトイレの扉が開く するともう40絡みの中年太りしたおじさんが入ってきた 「!?」 「あれぇ?女の子がトイレ使ってたのか~、こっちのトイレ使うなんていけないんだ~」 「ッ!!」 「それに鍵かけないなんて不用心だよねぇ?」 おじさんはふーっふーっと息を荒くしながらにやにやわらってこっちに近付いてくる なんかこの人…ヤバい… 直観的にそう思った にげなきゃ… 「こ…ないでください…」 出来るだけ声を高くしてそう言った 「……ひと、呼びますよ…」 「………」 「…?」 そう言うとそいつは立ち止まって静かになった …?行ってくれるか…? でもすぐそいつはにたぁっと笑って顔を上げて近づいてきた 怖くて足がすくむ 震える足で必死に逃げようとしたけれどそいつにがばっと抱き着かれて動けなくなった 汗で湿った肉厚な手が体を這ってゾワゾワッと悪寒が走った かすれる声を振り絞る 「ひ…ひとを…」 「人…良いのかなぁ~?…ぼく、知ってるんだよねぇ~」 「!?」 「君、男の子だよね?」 「ッ!!」

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