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『なにか』

くそっ…兄貴とあのアホ男のせいで無駄に時間食った… 「…はぁ…はぁ」 キョロキョロと辺りを見回しながら額にうっすら浮かんだ汗を拭う まなと『デート』やからってせっかくそれなり見た目気にして服を選んで着て来たから動きづらい… …まな…… 「………」 手に握ったままのスマホに目を落とす でもスマホにまなからの連絡はきとらんみたいやった ついさっきまなに電話してみたけどまなは出んかった せやからあの三人組に電話してみたんやけどそしたらもう結構前に別れた…っちゅうかお化け屋敷に入ろうとしたらまなが逃げたって… まな…嫌いやもんな… そんな事を思いながらもう一度まなに電話を掛けてみようとした その時 「ッ!!」 「!!」 何かがドンッとオレにぶつかって来た 傾いた自分の体を支えて同じく傾いた相手の体を支える 「…はぁ…っはぁ…はぁ…」 「!!まな!!」 「…銀……」 オレにぶつかって来たのはまなやった 自分の着とる服の胸元を左手できゅうっと握りしめてひどく疲れた顔をしていた ウィッグが乱れて額には汗をかいとる 「よかった、ゴメンな…良く確認せんとあんな別れ方したから…」 「………」 「…?…まな…?」 まなはオレの顔を見て瞳を揺らして戸惑ったような顔をしとった なんかおかしい… オレの胸のとこに沿えられとるまなの右手が小刻みに揺れとった 「………なんかあったん…?」 「………」 そう尋ねるとまたまなは困ったような顔をした あったんや… 「なにあったん?」 「………」 「まな?」 「………」 俯いてしまったまなの顔を覗き込んで聞くけどまなは何も言わないままやった ココじゃ言いにくいんやろか… ざっと見た感じ走れるくらいやしそんなに大きなけがや痣や痕は無いように思えた まなはなんだかそわそわして周りを気にしている とりあえず移動したほうがよさそうやな… 「まな、おいで…」 「………」 「いこ?」 「………」 まなの手を引くとまなはこくんっと頷いた

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