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ラブラブアピール

そのまましばらく先輩に連れまわされるように遊園地を回った 先輩はオレの手を握ったままたまにオレを見上げてはえへへと笑った 「…先輩疲れてないです?もうずっと歩きっぱなしですけど…」 「うーん…ちょっと疲れた…休憩しよっか?」 先輩はそう言ってその時初めて少し疲れた顔を見せた 今俺が聞くまで疲れてることも忘れてたらしい とりあえず近くに座れるカフェみたいな場所を見つけて飲み物を買った 「先輩何が良いです?」 「リンゴ!!リンゴジュース!!」 「じゃあ…リンゴジュースとコーヒーで」 ポケットから財布を取り出すと先輩がオレの服の袖をねぇねぇと引っ張った 先輩は熱心にカウンターに乗ってる紙を指差してる そこには… 『カップル限定企画!! 会計時に店員にラブラブアピールをしてくれたらなんと半額!!』 と書かれていた ピンクや赤のたくさんのハートでデコレーションされていてなんだか恥ずかしい… 「猛これやろ?半額だってよ?」 「別に半額じゃなくても…」 「でも猛スーパーじゃいっつも半額のものを…」 「やるんで、言わないでください…」 「やったー!!これやりますー!!」 多分…先輩は半額云々って言うよりもカップルっぽい企画に参加したいだけだと思う… ……………まぁ…半額嬉しいけど… 先輩に声を掛けられた店員さんはにこにこしたままこっちを見てる 先輩もおれを見上げてわくわくした顔のまま待機していた でも…ラブラブアピールって……ハグとか?お姫様抱っことか? オレなりに考えた結果わかりやすいし簡単なので先輩をお姫様抱っこすることにした これ頬付先輩と学さんなら大変そうだな…先輩が小柄で良かった… そんな事を思いながら先輩を抱き上げるためによいしょとかがんだ その時… 「ッ!!」 「!?」 ふにゃって唇に柔らかい物があたった 目の前に先輩の顔が見える 店員も含めて周りのお客さんも息を飲む音がした …せ…先輩!? 慌てて先輩の肩を掴んで体を離すと先輩はうーっと唇を突き出したままコテンっと首をかしげた かわいい………じゃなくて… 慌てて反れそうになった思考を元に戻す先輩はきょとんとした顔をしてた とにかくここから出ないと… 恥ずかしくて学校祭の時以来ぐらい顔が熱かった それにあの時はなんて言うか…気分がいろいろ高ぶってたから恥ずかしさもそこまでだったけど今はいたって冷静だ 「…す、すみません…会計を…」 「あっ、はい!!」 はっと我に返った店員さんにちゃんと半額にしてもらって商品を受け取ってお店を出た 店員さんのあの反応見た感じだとやっぱりキスする人はめったにいないんだな…

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