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見せつける

「…す、すみません…会計を…」 「あっ、はい!!」 「………?」 猛と一緒に遊園地に来て、一緒に回って…それでさっきちょっと疲れたし休憩しよっかって言ってお店に入った そしたらそこで… 『カップル限定企画!! 会計時に店員にラブラブアピールをしてくれたらなんと半額!!』 って張り紙見つけてやることになったんだけど… 「…先輩…行きましょ…」 「?う、うん」 猛は顔を赤くして飲み物を受け取るとそのままそそくさとお店を出てしまった おれの手を引いて大股で歩いて行く 猛の方がおれより一歩の歩幅が大きいから置いて行かれないようについていくのに必死だった しばらくするとあいてるベンチがあって猛はそこにおれを座らせて隣に自分も座った さっき買ったリンゴジュースを渡してくれて猛もまだ赤い顔のまま自分のコーヒーをすすった 「………」 「?」 変な猛? 猛の横顔を見つめながら首をかしげてるとわけがわからなそうな顔のおれに猛が気づいて『あー…』と一瞬視線を逸らして考えてからおれにしせんを戻した 「その…さっきの…」 「半額?」 「………半額………まぁ…それです……あの『ラブラブアピール』って別にき…キスじゃなくても良かったんですよ?」 「?」 猛は少し顔を赤くしておれにそう言った あ………猛…もしかして嫌だったのかな… 男同士でそういうことしたり、そういう関係の男二人組が堂々としたりすることがあまり普通ではないってことをおもいだした 女の子の格好をしてるから大丈夫って少しはしゃぎ過ぎちゃったかな… 「………猛…もしかして嫌だった…?」 恐る恐る猛に聞いてみる すると猛はハッとした顔をして首を振った 珍しく猛が慌てていた 「そんなことないです!!…そんなことないです…し…その…」 「?」 「…………」 猛は途中で言葉を詰まらせてチラッとこっちを見た 顔がさっきよりも赤くなってる なんだかこんな猛はなかなか見ないから新鮮でかわいかった 耳も真っ赤だ… 「その…恥ずかしかったですけど…ちょっと見せつけた感があって優越感でした……」 「…!!」 猛がそう言ってくれて嬉しくてうんうん頷いた 「おれもね?楽しかったよ」 「…ふふ…」 「へへ…」 なんだかおかしくてどちらからともなく笑った

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