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イエスマン

とにかくどうやら金さんはそのウソかホントか色々わからないアクシデントで足首を痛めてしまって頬付先輩に置いて行かれたらしい… でも実は氷の入った袋をお兄さんに持ってきてあげるぐらいの優しさは頬付先輩にもあるんだなとか思ったりもした… 「金さんはなんで女装してるの?デートなの?」 「そうだよ~銀とのデート♥」 「えー…銀は学とだよ~」 「じゃあ学くんともデート♥」 「えー?」 っていうかそんな事に感心してるより、このままだと先輩とのせっかくのデートが金さんとのお喋りでおわってしまう あまりこんな風にデートらしいデートをする機会を紺庄先輩に作ってあげることもできないから今日は『デート』を楽しんでほしかった 先輩は金さんと楽しそうにお喋りしている こうやって見てると女の人同士の楽しい会話にしか見えない………………でも……… ひとつ深呼吸して意を決して先輩に声を掛けた 「…そろそろ先輩行きます…?」 隣に座る先輩の腕に触れてさりげなく先輩を促してみる その時に先輩の向こうで長い脚を組んで座る金さんと目が合った 金さんは頬付先輩そっくりにニヤッと笑ってオレを面白そうに見ていた なんだかゾクッとした 頬付先輩みたいな見透かすような目だった 「えー…でも金さん足痛そうだよ?」 「……そう…ですね…」 うっ…と言葉に詰まる 金さんが足を痛めているのは事実だしそれを無視しようとしている自分に少し罪悪感が募った 「遊園地のゲートのとこまで歩くのもちょっと辛いかもだって、おくって行ってあげよう?」 「………」 「ねぇ猛いいでしょー猛ならおんぶできるよ?」 「………」 先輩がくりっとした大きな目でこっちを見上げている チラッと金さんを見ると金さんも同じようにきゅるんっと顔を作ってオレに媚びてきた ……………オレはやっぱりこの兄弟が苦手だ………… 先輩はおねがーいとオレの腕にしがみ付いてる ……………………っはぁ……先輩がそう言うならしかたない…… 「……ゲートのとこまでですよ…」 「本当?やったぁ!!」 「わーい猛くん大好き!!」 手を取り合って喜ぶ紺庄先輩と金さんをしり目に再度深くため息をついた 頼まれたらノーと言えないのはオレの悪い所だ…特に紺庄先輩に対して… そんな反省をしつつ重い腰を上げた こうなったらさっさと金さんを送り届けてデートに戻るしかない 「……おぶります…いやだったら肩貸しますけど…立てますか?」 「お姫様だっ…」 「おぶりますね」 唇を尖らせる金さんをおぶって遊園地の出入り口に向かった

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