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嵐のような人
「ありがと~助かったよ~」
「良かった~、良かったね猛」
「………ウス…」
「でも猛くんの背中硬くて乗り心地が悪かったなぁ、健斗くんにおんぶしてもらえばよかったかな?」
「いいよ!今度はオレがしてあげるね!」
「………」
……オレはやっぱりこの人が苦手だ…
金さんを遊園地の出入り口に送り届けた時に改めてそう思った
悪意がなさそうであるのが悪意モロ出しの頬付先輩よりより質が悪い…
こんな金さんと頬付先輩の両方から絡まれてそれをいなしている学さんに再度同情と尊敬の念を抱いた
「じゃあ…ホントは銀とパレード見たかったんだけどしょうがないからオレは帰ろうかな?お迎えきたみたいだし…」
「………」
先輩が指を差す方向を見ると赤い派手な車から見るからにバリバリのキャリアーウーマンって感じの女の人が降りてきて金さんに「かなぁ~」と声を掛けていた
金さんはその人にふりふりと手を振りかえしている
「あ、そうだ猛コレ猛のポッケにあったやつ、返しとくね?ココ、新しいしきれいだし玩具も充実しててルームサービスなんかもおいしいからおすすめだよ?」
「……?…!?…こ、これは!!頬付先輩が…!!」
見ると金さんが持っていたのは今朝ポケットに乱雑に押し込んだラブホテルの優待券だった
慌てて弁解しとく
「?…あぁ、銀?………って、え?じゃあこれオレが銀にあげたやつじゃん!!今度一緒に行こうねって約束したのに!!」
「……そ…なんすか…」
「そうだよ~!!もう!!銀知らないんだから!!一緒に行ってあげない!!それ猛くんにあげる!!」
「……はぁ…」
無理矢理一方的な約束をする金さんとそれを嫌がって何事も無いようにオレに押し付けてくる頬付先輩の姿が容易に想像できた
って言うか…そんなややこしいことになりそうなもの後輩に押し付けないでくださいよ…
はぁ…っと溜息が漏れた
ちょうどまた金さんを迎えに来た女の人が「かなぁ!!」と金さんを呼んで催促する
金さんはそっちに視線を向けてからもう一度こっちをむいて口を開いた
「もう行かなきゃ、じゃあね?銀によろしく!!」
「………」
「健斗くんもばいばい?明日足腰とお腹に気を付けてね!!」
「?おなか?足腰?」
「ッ!!かなさん!!」
「ははっ、じゃあね?」
金さんは楽しそうに笑うとひょこひょこ足を引きずってゲートの外に出て行き迎えに来ていた女の人の肩を借りて車に向かった
なんか…どっと疲れた…
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